金川真弓 無伴奏ヴァイオリン・リサイタル
〇2025年4月12日(土)13:30〜15:15
〇神奈川県立音楽堂
〇21列29番(21列上手側)
〇バッハ「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番ホ長調」BWV1006、同「同第1番ロ短調」BWV1002
 同「同第2番ニ短調」BWV1004
 (以上、繰り返し全て実施)

聴く者の想像力を刺激

 神奈川芸術協会主催の「音楽堂ホリデーアフタヌーンコンサート」の一環で、以前から注目している金川真弓が登場。しかも、プログラムがバッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ全曲とあっては、行かないわけにはいかない。8割程度の入り。

 事前の発表から演奏曲順が変更とのアナウンス。前半1番→3番のはずが入れ替わる。
 まず3番、「前奏曲」ではフレーズの塊を確認するように、句読点のようなわずかな間を挟みながら進む。と言っても音楽の流れが損なわれるわけではない。最後の上昇フレーズはインテンポでさらりと終わる。
「ルール」は終始抑え目の音量でしっとりと歌う。「ガヴォット」では、最初の主部をオーソドックスに聴かせた後は、間奏部の曲想を続く主部の弾きぶりにも反映させるので、主部に戻るたびに異なり曲想となり、実に面白い。「メヌエット�記供廖屮屐璽譟廚詫ト�な演奏。

 1番の「アルマンド」、付点のリズムを律儀なまでにきっちり刻みながら進む。その「ドゥブレ」(変奏)は一転してレガート重視。「クーラント」は3番の「ルール」同様控え目の響きで丁寧に歌ってゆく。「ドゥブレ」では一転して緊張を高め、隙のないフレージングで一気に弾き通す。「サラバンド」はアクセントやテヌートを十分効かせながら進む。「ドゥブレ」はまたも一転してレガート重視。「ブーレ」ではさらにスタッカートやアクセントを強調しながら歯切れのいいフレージングの中にもダンスの躍動感が加わる。「ドゥブレ」は繊細なフレージングが印象的。

 後半の2番、「アルマンド」では再び句読点のようなわずかな間を入れながら進む。「クーラント」では付点のリズムと8分音符の連続との対比が楽しい。「サラバンド」は低音をしっかり響かせた、重厚な演奏。「ジーグ」は一転して軽やかに。
 ここで間を取り、調弦もし直していよいよ「シャコンヌ」。最初の3つの重音を一つの塊として、3つ目の重音を短めに切って明確に読点を入れる。次の3つの重音も同様。変奏ごとに曲想の変化を明確につけながらも、音楽の流れはあくまでスムーズ。32分音符の連続フレーズになっても、アルペジオが続く部分になっても、優美さが失われず、聴く者に過度の緊張を強いることがない。それでもニ長調に転じるとホッとする。喜びがじわじわとあふれてくる。しかし再びニ短調に戻るとその喜びははかなく消え、最後の音は力強さの中にも、大切なものが失われてゆくようなはかなさも感じさせる。
 彼女の演奏は聴く者に様々なことを想像させる。ある女性の波乱万丈の一生のようにも聴こえれば、冬から始まり、春、夏、秋、そして再び冬へと移り行く季節を表現したようにも聴こえる。演奏終了後多くの聴衆がため息を漏らしたが、彼らは何を想ったか。

 1月に彼女の師匠、ブラッハーがやはりパルティータ3曲を演奏したが(こちらを参照)、全くスタイルの異なる演奏。終始緊張を強いられたブラッハーに対し、聴いている間はリラックスしていたが、聴き終わってからじわじわ凄さを実感できる感じ。無伴奏のソナタもぜひ聴いてみたい。

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