新国立劇場「イタリアのトルコ人」(5回公演の初日)
〇2026年10月2日(金)18:00〜21:15
〇オペラパレス
〇4階4列22番(4階最後列ほぼ中央)
〇セリム=アレハンドロ・バリニャス・ビエイテス(B)、フィオリッラ=クライディア・ムスキオ(S)、ジェローニオ=パオロ・ボルドーニャ(BBr)、ナルチーゾ=ルジル・ガティン(T)、詩人プロスドーチモ=ブルーノ・タッディア(Br)、ザイダ=但馬由香(MS)、アルバザール=山本康寛(T)
〇アレッサンドロ・ボナート指揮東フィル(10-8-6-4-3)、新国合唱団(12-17)
〇ロラン・ペリー演出
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久々のロッシーニにウキウキ
2026〜27年シーズンの新国立劇場の開幕を飾るオペラは、ロッシーニ若き日の作品「イタリアのトルコ人」。本格上演としては2003年以来とあっては、行かないわけにはいかない。8割程度の入り。
序曲の間、緞帳が上がると男女が見つめ合う巨大な写真の紗幕。横書きのイタリア語が縦向きにされ、"Carina"(かわいい)などと書かれている。紗幕越しに舞台中央には、ビーチソファに座ってファッション雑誌を眺めるフィオリッラ。紗幕は雑誌の中の写真の1枚ということか。
紗幕が上がると下手にジェローニオとフィオリッラの家、1階にガレージ、右側の階段を上がった2階が玄関、その左側に居間らしき部屋の窓。上手にそれよりは小ぶりの詩人の家。2階の窓から詩人が外を眺めている。2件の家の奥にはやはりファッション誌から切り抜かれた写真が並ぶ。
ガレージが開くと中からジェローニオ登場。米国郊外に住む中年男性にありがちなTシャツ、短パン姿。芝刈り機を出して芝をきれいにしてはフィオリッラのソファにぶつかって喧嘩となり、水まきしようとホースを出して伸ばしながら水をまいているとまたも彼女とぶつかって喧嘩となる。その様子を見ながら、序曲の音楽に合わせてタイプを打つ詩人。しかし満足のいく作品とならず、打ち出した紙を丸めて窓から放り投げる。
第1幕、2件の家の前が塀で仕切られ、その前を上手から旅人姿のロマたちが入ってくる。彼らから遅れて登場するザイダ、セリムに棄てられたことを嘆く。アルバザールが慰める。それを聞いた詩人は家から出てきて、喜劇の幕開きのアイデアを得たと喜ぶ。
一旦下手に下がったロマたちだが、ザイダと女たちだけ出てくる。ジェローニオが出てきて、詩人に促されてロマたちの占いを受ける。不運な将来を予言されて、怖がって中央奥へ退場。ロマたちも下手へ退場。
塀が取り払われ、2階の窓からフィオリッラが顔を出す。「一人の男を愛し続けるなんて馬鹿げてる」と歌う。
上手端からファッション誌の巨大な表紙が傾斜しながら現れる。"Non posso AMARTI"(あなたを愛することを知らない)と書かれている。セリムの乗った船という設定。ページの間からセリムが登場。イタリアの美しさをたたえるソロ。二人は見つめ合い、惹かれ合う。移動式階段が表紙の先に付けられ、セリムが降りてくる。フィオリッラも降りてきて、2人手を取り合い、中央奥へ退場。
下手から菓子の袋を持ったナルチーゾ登場。フィオリッラへの思いがかなわぬことを嘆く。歌い終わるとソファに座って菓子を口にする。そこへ詩人とジェローニオが加わって三重唱。
中央にジェローニオの家のダイニングルームが奥から出てくる。フィオリッラとセリムが語り合っているところにジェローニオ登場。テーブルの上に立ち上がったセリム、腰布(クシャク)をフィオリッラが手に取って夫に見せびらかすと、ジェローニオはそれを手に取って布にキスするので、セリムは「礼儀正しい人だ」と驚く。その間にナルチーゾも入ってきて、観葉植物の陰に隠れて様子をうかがっている。四重唱へ。
フィオリッラとジェローニオが手前に出てきて喧嘩の続き。二人の後ろに紗幕が下りる。互いに駆け引きしながらの二重唱、ロッシーニのテンポと調性の変化が抜群の効果をもたらし、聴き応え十分。一時は歩み寄る二人だが、最後はフィオリッラが「恋人を千人作る」と宣言して夫を慌てさせる。
紗幕が再び開くと、海辺の場面。奥に小さく見えるジェローニオの家。その手前に上手には船が3艘、下手には艦長と女の恋物語のシーンを思わせる写真パネルが並べられた壁が3枚。それぞれ手前に行くほど大きく作られている。
ロマたちが現れて陽気に歌っている。そこに現れたセリムはザイダと再会、詩人とともに三重唱でよりを戻す。下手から赤いワンピース、赤い帽子に赤サングラスのフィオリッラ登場。セリムはその女に惹かれ、愛を告白。しかし、帽子とサングラスを外すとフィオリッラであることがわかり、一同驚く。主役6人が上手側で片足を上げたストップモーションで歌い始め、後半は普通の立ち姿に戻る。内側にギザギザの付いた額縁の中に一同集まり、フィオリッラがそこから飛び出そうとするのを他の人物たちが止める。
第2幕、舞台中央手前にバー。並んでストゥールにかけるジェローニオと詩人。ジェローニオが愚痴をこぼしていると、上手からセリム登場。詩人は奥へ下がり、セリムはストゥールの上に立って、妻を売るようジェローニオに持ち掛ける。自分は上に立てないので、セリムを見上げながら拒否する。ジェローニオを殺してでもフィオリッラを奪うと脅すセリムに対し、ジェローニオも早口歌唱で対抗。最後はストゥールを持ってにらみ合い、互いに叫びながら突進して反対側へ退場。その様子を奥で見ていた詩人、物語を早く終わらせる思案を始める。
海軍士官と女性が寄り添う写真が何枚か組み合わされたパネルが両側から出てくる。下手側に額縁に入ったフィオリッラがせり出てくる。中央に現れたセリムを誘惑。そこへ上手側に、やはり額縁に入ったザイダがせり出てくる。しかしフィオリッラにはかなわず、後方へ。
セリムとフィオリッラが退場した後、その様子を奥で見ていた詩人が中央へ、下手奥から出てきたジェローニオにセリムの計略を伝える。
二人が退場した後上手からナルチーゾ登場。少し歩いては止まる。スポットライトもその動きに合わせるが、ライトが先に動くと彼も従う。今度こそフィオリッラを自分のものにしようと誓う。
紗幕が下り、その手前でジェローニオが仮装の衣装を持ってくる。妻に愛されないことを嘆く自嘲的なアリア。
紗幕が上がると仮面舞踏会。男声は全員海軍士官姿、女性は全員グレーの肩出しドレス姿。ジェローニオだけはトルコ風の白地に赤い線の入った衣装。セリムはザイダと、ナルチーゾはフィオリッラと踊っているが、彼らを引きはがそうとする。舞踏会は大混乱に。
舞台が第1幕前半に戻る間、詩人とジェローニオが打合せ。ウソの離縁状をフィオリッラに渡すことにする。
ジェローニオと入れ違いにフィオリッラ登場、詩人から離縁状を渡され、己の過ちを悟る。彼女を追ってきたロマたちも、それを知って去ってゆく。彼女は家の2階に上がり、窓から雑誌を投げ捨てる。
入れ違いにジェローニオ登場。詩人は捨てられた雑誌を片付けながら、フィオリッラが反省していたら許すようアドバイス。家の陰に隠れ、現れたフィオリッラの様子を覗く。セリムとザイダが出帆準備をする様子を見て後悔する彼女に向かい、ジェローニオは優しく歌いかけ、仲直り。一同集まってフィナーレ。歌い終わって解散した後、詩人は1人舞台に残り、完成した台本を高々と掲げる。
舞台を20世紀後半に移しつつも、ブッファの要素を損なわず、現代人にも起こりうる恋愛喜劇として描いている。
歌手たちはいずれもロッシーニの歌を十二分に表現。ビエイテスはトルコ人の粗暴さと本音部分のいい加減さをバランスよく表現。ムスキオは恋多き女だがどこか憎めないところがあって、これも役にぴったし。ボルドーニャもイタリアの中年男性の悲哀を見事に歌と演技で見せる。ガティンは軽く明るい声が素晴らしく伸び、ロッシーニ・テノールの面目躍如。タッディアも明るい声質で、狂言回し役がよく合っている。但馬は5人の外国人歌手たちに比べて声も演技も全くそん色なく、堂々と渡り合う。
ボナート指揮の東フィルは前半こそ不安定な部分があったが、ロッシーニの軽妙な音楽世界を十分表現。歌手と合わない部分もいくつかあったが、講演を重ねるうちに改善されるだろう。
久々に生で聴くロッシーニだったが、やっぱり聴いているだけで楽しいし、ウキウキしてくる。この公演をきっかけに、再びロッシーニのオペラが(セリア、ブッファヲ問わず)各地で上演されることを期待したい。
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