金川真弓&ジュゼッペ・グァレーラ デュオ・リサイタル
〇2026年9月14日(月)19:00〜21:05
〇武蔵野市民文化会館小ホール
〇12列16番(最後方から4列目中央)
〇ヤナーチェク「ヴァイオリン・ソナタ」(第1,3,4楽章繰り返し実施)、ブラームス「ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調」Op78(雨の歌)(約29分)
リスト「レーナウの「ファウスト」による2つのエピソード」より「夜の行列」、「メフィスト・ワルツ第1番」(村の居酒屋での踊り)
プロコフィエフ「ヴァイオリン・ソナタ第2番ニ長調」Op94bis(第1楽章提示部繰り返し実施)
+モーツァルト「ヴァイオリン・ソナタ第38番ハ長調」K403より第3楽章

有無を言わさぬ巨匠の風格

 今年も金川真弓のヴァイオリンが聴ける。しかも武蔵野の小ホールで。こんな嬉しいことはない。客席にはカメラが入っている。NHKでそのうち放送されるだろう。ほぼ満席の入り。

 いきなりヤナーチェクの難曲から始める。第1楽章、変イ短調4分の3。聴く者の不安をあおるようなVのソロで始まり、Pの激しいトレモロ風の伴奏の上をD−EsーHなど4分音符3つの平易なフレーズを繰り返しながら、チェコ風の抒情的な歌を紡いでいく。終盤は音楽の勢いが失われ、弱々しい雰囲気に。
 第2楽章、ホ長調8分の3。「バラーダ」と題が付いている。一転して素朴で暖かい雰囲気の音楽に。中間部では変ロ短調に転じ、Pの32分音符の伴奏の上でVが優美に歌う。
 第3楽章、変イ短調4分の2。ヤナーチェク得意の4度進行のメロディをPが奏でると、そこにVの32分音符の下降音型が鋭く絡む。トリオではPの物悲しいメロディにVが優しく絡む。
 第4楽章、嬰ト短調8分の12。Pの民謡風のメロディに、Vが32分音符の断片的なフレーズを繰り返して応じる。徐々に盛り上がってゆき、頂点部分のVの高音が悲しくも美しく響く。最後は線香花火が燃え尽きるように終わる。

「雨の歌」第1楽章、冒頭のPの和音をアルペジオで弾き始めるのに強烈な違和感。ブラームスはそんなことは書いてないはず。Vの繊細かつ丁寧なフレージングを聴いて心を落ち着かせる。25以降のfで奏でる高音、力強さの中にも温かみがある。36以降の第2主題も心地良い。
 第2楽章、冒頭PのGとEsの3度の和音でEsがほとんど聴こえない。上のパートのメロディを表に出したかったのだろうが、音楽としてバランスが崩れてしまっている。9からためらいがちに加わるV、ここも細心の注意を払って響かせている。24以降、変ホ短調からロ短調に転じるPの和音の連続、どこか音が抜けているように聴こえる。30以降のVは緊張感を高め、決然とした意志を示す。
 第3楽章、Vの「雨の歌」に安心して身を任せる。最近日本各地を豪雨が襲っているが、天に向かって「雨はこんな風に降ってほしい」と呼び掛けているようだ。

 後半はまずグァレーラがソロでリストの披露。「夜の行列」は、核となるフレーズを繰り返しつつ、少しずつ発展させながら大きな音楽へ。ピアノ・ソナタに少し似た構成。そのまま続けて「メフィスト・ワルツ」。強弱、急緩ともに振れ幅の大きい、スケール豊かな音楽。ただ、冒頭ppの左手の連打が不明瞭なのは玉にキズ。20分を超える熱演に。

 プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第2番と言えば、かつて内外の旬な奏者がこぞって取り上げ、この曲が弾ければ巨匠グループの仲間入り、みたいに評価される時代があったように思う。それを金川が取り上げるとは。
 第1楽章、冒頭から伸びやかなVのフレーズが心地良い。16分音符のフレーズを刻む15以降、ピアノが控え目なのでプロコフィエフ特有の機械的な雰囲気が今一つ出てこない。
 第2楽章は、軽快な中にも乾いた空気が流れる。
 第3楽章、レガート重視のVのフレージングにまたも身を委ねる。
 第4楽章、行進曲風の音楽をノリノリで弾き進める。Pの刻みもようやくVにかみ合ってきた。冒頭主題が回帰するたびに音楽の密度が一段階上がり、フィナーレでカタルシスに達する。

 Pが控え目どころか、本来聴かせるべき音をきちんと響かせていないように感じる箇所がいくつかあり、気になる。ただ、どの曲も楽章間の間をほとんど取らずに進めていくあたり、二人の息が合っているのは伝わってくる。

 アンコールでは、盛りだくさんのプログラムを締めくくる「軽いデザート」として、モーツァルトのソナタを。翌日2人は浜離宮朝日ホールで、オール・モーツァルトのプログラムを演奏する。若者たちの果てしなきヴァイタリティにまたも嫉妬。

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