カルテット・ルーチェ
〇2026年3月3日(火)19:00〜20:50
〇武蔵野市民文化会館小ホール
〇12列16番(最後方から4列目中央)
〇ハイドン「弦楽四重奏曲第75番ト長調」Hob.�掘檻沓機別鵤横永�、繰り返し全て実施)、ブラームス「同第2番イ短調」Op51の2(約31分、第1楽章提示部繰り返し省略)
ベートーヴェン「同第9番ハ長調」Op59の3(ラズモフスキー第3)(約29分、第1楽章提示部繰り返し省略)
+ハイドン「同第38番変ホ長調」Hob.�掘檻械検幣蘆漫砲茲蠡茖干攵�
〇カルテット・ルーチェ(V=渡辺紗蘭、中嶋美月、Va=森智明、Vc=原田佳也)
![]()
新たな光を探し求めて
久々に武蔵野市民文化会館の小ホールへ。ここで弦楽四重奏を聴くのは初めてかも。カルテット・ルーチェは2021年東京音楽大学付属高校に在学する4人により結成されたという若いグループ。渡辺は翌年日本音楽コンクール第1位、中嶋はその翌年同コンクール第2位。それよりも重要なのは渡辺、中嶋、森の3人は原田幸一郎、森は池田菊衛にも師事していること。つまり東京カルテットのDNAを受け継ぐカルテットと位置付けられていることだろう。ちなみに「ルーチェ」(Luce)とはイタリア語で「光」の意味。ほぼ満席の入り。
前半の2曲は東京カルテットのデビューLPの収録曲で、カルテット・ルーチェが原田に指導をお願いしたとのこと。
ハイドンの75番第1楽章、はつらつとした3つの和音に続き、メンバーの自己紹介のようにVcから1人ずつ主題を提示してゆく。56小節以降のユニゾンも軽やかに。
第2楽章、冒頭のアンサンブルは一つ一つ丁寧に和音を響かせ、17以降の32分音符のフレーズも落ち着いた歩み。徐々に盛り上げて30の頂点へ。
第3楽章、冒頭からのpのフレーズと8以降のffのフレーズとの対比が見事。トリオ後半の1Vのメロディ、1回目と2回目で節回しを変える。
第4楽章、ト短調のユニゾンが怪しげな雰囲気を創り出す。聴く者の不安をかき立てながら進んでいくが、138以降ト長調に転じることでホッとする。
ハイドンでは下手から1V−2V−Va−Vcの順に座っていたが、ブラームス以降はVaとVcが入れ替わる。
ブラームスの第1楽章、同じイ短調のベートーヴェンの15番を思わせる1Vの2分音符4つの主題に、2V以下がハイドンのときよりはるかに自由に、しかし各々の役割を守って絡んでゆく。ハイドンでは響きが拡散していて、ホールのせいかと思ったのだが、この曲から俄然響きが中央へ凝縮されるように聴こえる。
第2楽章、1Vのロマンティックな主題に2V以下が優しく寄り添う。イ長調からヘ長調に転じる77以降、初夏の草原にさわやかな風が吹くようで、心地良い。
第3楽章、メヌエットだがテンポは遅めで、メランコリックな雰囲気。ブラームスらしい内省的な音楽。
第4楽章、1Vが提示するメロディを12以降Vaが受け継いで雄弁に歌う。吹き荒れる嵐がようやく収まって238以降イ長調に転じるのも束の間、そこで終わらないのがブラームス。320以降の日が沈むような和音に続いて激しいイ短調に戻る。目まぐるしい曲調の変化をしっかり自分たちのものとして表現している。
後半のベートーヴェンの第1楽章、暗闇の中を手探りで何かを追い求める序奏に続き、20以降解決の糸口を手繰り寄せ、43以降確信をもって歩み出す。
第2楽章、道に迷いどこへ行けばいいのか、再び探し求めるような雰囲気。イ短調なので、ブラームスの2番にも共通する響きも聴けて面白い。
第3楽章、再び行くべき方向を見つけたか、喜びに満ちたメヌエット。
コーダでまたも先行きに霧がかかるがすぐに晴れ、アタッカで第4楽章のフーガへ。前半の2曲は原田に代表される東京カルテットに学びながらも影響を受けている部分もあったし、この曲も当然東京カルテットの録音があるが、ここでは今自分たちにできることを自信をもって披露。すがすがしい演奏。
アンコールはハイドンの「冗談」第4楽章。終盤のユーモラスな終わり方に客席からも笑みがもれる。ただ、VaとVcの配置はブラームス以降のまま変えずに演奏。
楽譜は奏者によって紙だけだったり、タブレットだけだったり、曲によって変えたりと四者四様なのも令和のカルテットらしい。
技術的には4人とも申し分ない。2人のヴァイオリンは対等に渡り合っているので、そこにVaとVcがもう少しふくよかな音質で絡んでいけば、よりバランスの取れたアンサンブルになるだろう。表現意欲は4人とも旺盛なので、1Vが大半の旋律を弾く古典派よりもロマン派の方が向いているだろう。今後の活躍に期待したい。
![]()