高橋望×バッハ・パルティータ
○2019年9月14日(土)14:00〜15:50
○松井まちづくりセンター公民館ホール(所沢)
○5列12番(5列目ほぼ中央)
○バッハ「パルティータ第1番変ロ長調」BWV825(約20分)、同「同第2番ハ短調」BVW826(約17分)、同「同第4番ニ長調」BWV828(約28分)
+バッハ「平均律クラヴィア曲集第1巻」第9番ホ長調より前奏曲

感性を和ませ、知性を刺激

 以前から注目している高橋望のピアノだが、なかなか日程が合わず、とうとう所沢まで遠征?することとなった。ここでは地元のボランティアが「松井クラシックのつどい」と称して、毎月第2土曜に演奏会を開き、今年で30周年になるそうだ。
 松井公民館の中にあるホールは、中央に階段席、演劇スタジオ風の折り畳み椅子が140席、コンクリートの壁を隔てて両脇にも階段状のバルコニー席があり、合わせて300席。6割程度の入り。
 ステージは講堂のような横長の舞台だが、そこは使わず、カーテンのようなもので隠して、その手前に反響版を5枚置き、さらにその手前にピアノを配置。
 ピアノはヤマハの小振りのグランド(G3)。ステージのスペースからするともっと大きなものでも入りそうだが。

 パルティータ1番前奏曲、湖に映る月の影のように、静かに始まる。アルマンド、サラバンドでは前後半とも繰り返しを行ったが、コレンテでは前半のみ繰り返し。しかも、前半の2回目に入る前に導入となるフレーズをアドリブで挿入。メヌエット�響鞍召裡臆麑椶如�右手を1オクターブ上げて弾くサプライズ。ジーグでは、右手の上を交差する左手のフレーズが見事なレガートで聴き惚れる。

 2番のシンフォニアでは一転して速いテンポに。ハーモニーも、堂々と鳴らす奏者が多い中で、引き締まった響きを徹底。アルマンド、サラバンドも軽やかに流れる。クーラントもリズムの変化を殊更に強調しない。ロンドもレガート重視。カプリッチョでも左手の和音を軽めに響かせ、右手のメロディの流れを際立たせる。

 後半は演奏前にバッハが転職の度に給料が倍増したことや、息子たちの就職を大いに後押ししたエピソードが紹介され、場を和ませる。

 4番の序曲では、華やかな和音で会場がパッと明るくなる。細かいフレーズの何度も出てくるが、花びらをあちこちに撒いているようで心地よい。それがアルマンドになると、暖かい日差しにずっと照らされ続けているような気分になる。アリア以降はまとめて一つの塊であるかのように、一気に弾き進んでゆく。響きに明るさが増してゆくだけでなく、緊張感の高まりも併せて伝わってくる。

 終演後高橋は再び登場し、残った客との間でアフタートーク。調律が頼んでもいないのに、平均律でなくヴェルクマイスター第3という音律(CとEの3度が少し狭いらしい)で調律されていたこと、6曲の中で自分がやりたいものを選んだこと、ゴルトベルク変奏曲に比べると、パルティータは舞曲の集まりなのでより自由に弾けること、などなど面白い話が聞けた。先に書いた繰り返しについての考え方を聞くと、前後半で曲の長さが極端に違う(後半の方が長い)曲については、バランスを考えて後半の繰り返しは省略したそうだ。打てば響く、とはこういうことを言うのだろう。

 はるばる所沢まで来た甲斐があった。
 

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