ヴァイグレ指揮読響(第10代常任指揮者就任披露演奏会)
○5月14日(火)19:00〜20:55
○サントリーホール
○2階C10列17番(2階最後方から3列目ほぼ中央)
○ヘンツェ「7つのボレロ」
 ブルックナー「交響曲第9番ニ短調」(約59分)
 (16-14-12-10-8、下手から1V-2V-Vc-Va、CbはVcの後方)
 (首席奏者:コンマス=長原、第2V=瀧村、Va=柳瀬、Vc=遠藤、Cb=大槻、Fl=ドブリノヴ、Ob=蠣崎、Cl=金子、Fg=井上、Hr=松坂、Tp=長谷川、Tb=葛西、ティンパニ=岡田)


重心の低いブルックナーで新時代の幕開け

 読響は、今年度からフランクフルト歌劇場音楽総監督などを務め、以前から何度か客演していたセバスティアン・ヴァイグレを第10代の常任指揮者に迎えることとなった。今月3種類のプログラムが組まれ、うち2つは2回公演だが、お披露目の演奏会は一発勝負。9割以上の入り。

 ヘンツェの作品はオペラ「ヴィーナスとアドニス」からボレロを抜き出したもの。各曲に題名が付いている。
「�機メ鱇�もちの女」はティンパニのソロに始まり、途中で登場するアルトサクソフォンのソロが印象的。「�供セ寝痢廚魯�スタネットから始まるがすぐに消え、あちこちからボレロのリズムの断片が提示される。「�掘ゴ�待」はヴァイオリンのメロディがロマンティックだが中断される。「�検ゲΔ離�ジャク」はラヴェルでお馴染みの小太鼓のリズムに始まり、華やかな曲風。「�后ス睨�」で再びカスタネット活躍。「�此ツ砲漾廚任聾垢瞭佑�上げるような上昇ポルタメントが何度か示される。「�察ゥ▲薀咼△硫�女と雄大なダンス・ステップ」は提言の唸りから始まり(ラヴェル「ラ・ヴァルス」の出だしに少し似ている)、途中で打楽器群のカデンツァ風の部分があり、最後は賑やかに終わる。
 ヘンツェ特有の息の長いフレーズを主に弦が奏で、そこに管楽器と打楽器が割り込んだり、取って代わったりする。ヴァイグレは大きな3拍子を描きながらも、各パートに細かく指示を出し、ボレロのリズムを活かして情熱的な雰囲気を創り上げる。

 休憩中に舞台後方の打楽器などを片付けるのにかなり手間がかかる。この日はテレビ収録があり、打楽器用のマイクスタンドなども一緒に撤去する必要があるので、大変そうだった。男性トイレの行列ともども、15分では少々きつかったかも。

 ヘンツェの後でブルックナーとなると、編成がずいぶん小さくなったような錯覚がある。ヴァイグレは元ホルン(Hr)奏者なので、ホルンの配置に相当こだわったようだ。上手後方に、首席のリザーブを含め9人の奏者を縦3列に並べ、前から3−2−4に配置。何だかサッカーのフォーメーションみたい。

 第1楽章、テンポはほぼ標準的。4小節目以降Hrの提示する主題には、早くも悠揚迫らぬ風格がある。21で頂点に達するが、その後の1〜4番のメロディを支える5〜8番とのハーモニーのバランスが絶妙。51〜54で同じフレーズを2回ずつ繰り返すところでは、スコア通りpとppの区別をはっきり付ける。最初の全総の終わり近く、73ではrit.をほとんどかけない。97以降の第2主題、弦の響きが柔らかい。130の休符のフェルマータを長めに取る。
 その後も落ち着いたテンポで進むが、381以降少しあおり気味になる。400以降もそのテンポが維持される。
 再び息長く盛り上げていった末の全奏を受けて503〜504に残るHrのフレーズは控え目。途中で切り替えた速いテンポのまま最後まで突き進む。

 第2楽章、最初から速いテンポ。木管の和音に絡む1V、7の上昇アルペジオを強調。42以降の第1主題はアクセントをしっかり付けるものの、ゴリゴリした感じでなく、着実に土を踏みしめる感じ。100のTbの下降フレーズは強調しない。147以降管に弦の細かい上昇フレーズがしつこく絡むところでは、途中からテンポを上げないものの、159の切れ方がやや乱れる(2回とも)。227以降、Hrの8分音符2つのフレーズを強調。
 トリオもテンポは速い。49以降rit.はかけない。

 第3楽章、やはり速めのテンポだが、冒頭の1Vの主題は丁寧に歌わせる。続く5〜6のTpのファンファーレに突き抜ける感じはなく、レガート。29から登場するWTb(ワーグナーチューバ)4人のアンサンブルに聴き惚れる。51〜52のHr4人の合奏も負けていない。105以降の弦の上り坂も隙がない。140以降の弦の上り坂、145以降に絡むTbのアクセントはテヌート気味。155以降の弦は緊張感のある響き。
 終盤のクライマックスで199以降3回トレモロを叩くティンパニ、三段跳びのように1回目は少し抑え目、2回目でff、3回目でfffくらいの感じで差を付ける。206の休符のフェルマータも長め。
 219以降ゆっくり夕日が沈むように降りてくる。239以降、最後のHr+WTbの和音は音量をある程度保ったまま弦の最後のピツィカートとともにすぱっと切る。

 両腕を斜め上に広げた指揮者がゆっくり腕を下ろしてもしばらく沈黙が続く。聴衆にブラヴォー!

 第1楽章では時折カンブルラン時代を思わせる優美な響きが顔を出すものの、後半から第2,3楽章にかけては速いテンポで響きを引き締める。しかし、音楽の流れは骨太で、スケールが大きい。これまで気付かなかったHrのフレーズが随所で浮き出てくる一方で、Tpにもう一息突き抜けてほしいところも。
 全体的には、久々に重心の低いを聴いた気がする。

 旧東ベルリン出身のヴァイグレが常任となれば、再び独墺系のレパートリーに重きが置かれるようになるだろう。カンブルランの遺産は継承されるのか、新たな響きに取って代わられるのか。期待をもって見守りたい。

表紙に戻る