サントリー音楽財団創設40周年記念 サマーフェスティバル2009 特別演奏会
○2009年8月31日(月) 19:00〜20:50
○サントリーホール
○自由席(前半:2階Pブロック最後列、後半:2階RDブロック最後列上手端)
○リゲティ「時計と雲」
 シュトックハウゼン「グルッペン〜3群のオーケストラのための」
(休憩挟んで2回演奏)
○スザンナ・マルッキ(リゲティ、オケ�供法▲僖屮蹇Ε悒薀后Ε�サド(オケ�機法▲�レメント・パワー(オケ�掘忙愆� N響(コンマス=堀)、東混(リゲティのみ)

夏終わり 現代音楽 耳馴染む
 
 夏の終わりに現代音楽を特集するサントリーホールの「サマーフェスティバル」。今回はサントリー音楽財団創設40周年記念ということもあり、例年以上に充実したプログラム。細川俊夫のオペラ「班女」などいくつか行きたい公演があったのだがなかなか都合がつかず、結局最終日滑り込みになってしまった。朝から台風接近で荒れた天気だったが、開演前になると不思議と雨風も止んだ。前売りは完売だったが、不安定な天気の影響もあってか7割程度の入り。1階の両サイドが特設ステージに使われているので実質半分程度か。

 この日の目玉は何と言ってもシュトックハウゼンの傑作とされる「3群のオーケストラのための『グルッペン』」だが、その前にリゲティの小品をメインステージで演奏。ヴィオラ抜きの小編成の弦、弦と同じくらいの人数の管と打。その後ろを12人の東混の女声団員が取り囲むように並ぶ。
 5人のFlが2度で動くフレーズを吹き始めるがだんだん音程、リズム、テンポがバラバラになり、乱れてくる。やはり5人いるClや女声などが同じような短いフレーズを様々な音程、リズム、テンポで加わってきて、混沌になってくるとチェレスタ、鉄琴、Hpなどの長い音符がそれを中断させて静謐な響きに変わる。その後も短いフレーズの織り重なりと落ち着いたハーモニーとが繰り返し出てきて、最後は静かに終わる。前者が時計、後者が雲を表すということだろうか。合唱をやっていた者としては、こういう曲を聴くと自分でも歌ってみたいという気持がうずいてくる。むちゃくちゃ難しいやろうけど。

 ステージ上の配置転換をする間にステージ手前で岡部真一郎が指揮者の1人、スザンナ・マルッキに作品の特徴と本番までの裏話についてインタビュー。シュトックハウゼンがリハーサルのスケジュールまで厳密に決め、その中には3人の指揮者だけで振りを合わせる練習も含まれている、という話は面白い。さもありなんという感じ。マルッキが準備のため退場した後、岡部氏はサウンド・ディレクターを務める杉山洋一にも短いインタビュー。杉山氏の役割は、3つのオーケストラが対等に扱われているため、全体のバランスをチェックすることなのだそうだ。

 そうこうするうちステージの準備は進み、ステージと2つの特設ステージの間にそれぞれ連絡通路も設置され、団員たちが入場。ステージに向かって下手から第1、第2、第3オーケストラとなる。第1オケを振るカサドと第3オケを振るパワーも特設ステージの端で待機。全員揃うと通路ははずされ、特設ステージの柵が閉じられる。演奏が終わるまで逃げられないといった雰囲気。第2オケの指揮者と奏者の配置はリゲティの時と逆、すなわち指揮者はPブロックに背を向けて振る。そうしないと他の指揮者が見えないからだろう。
 3つのオケの規模はいずれも40人くらいずつで、楽器編成はだいたい同じだが、細かい違いがある。例えば第1、第3のHp、第2のピアノとエレキギター、第3のBCl。また銅鑼はどのオケにもあるが、第1が最も大きく第3が最も小さい。
 第1オケから演奏は始まる。第2、第3と受け継がれ、やがて3つのオケがバラバラに演奏したり、同じテンポで演奏したりする。Pブロックだと、いずれの場合も3つのオケの響きがうまく混ざり合っているように聴こえる。当たり前のことだがすぐ近くにいるピアノやエレキギターのフレーズがよくわかる。金管の強烈な響きが第1→第2→第3と受け継がれて、まるで響きの玉がステージの上を回っているような雰囲気も面白い。最後は第2オケのHrがEsの長い持続音の後短くGに上がって終わる。

 休憩後この曲をもう一度演奏。聴衆も1回目とは別の場所で響きを聴き比べようという、すばらしい企画。聴衆がどこに移動するかを見るだけでも面白い。前半は特設ステージにはさまれた1階席前方がぎっしり満員だったが、後半は前半ガラガラだったRA、LA、Pブロックがほぼ満席に。僕はステージから最も遠いRDの上手端へ。周りはほとんど誰もいない。
 2回目は響きのかたまりの中から飛び出す管楽器、打楽器のフレーズがはるかに鋭く伝わってくる。また、最も近くに見える第3より第1の方がよく聴こえてくる。金管の強奏が回る部分も、前半は見上げるようだったが、後半は見下ろすような感じ。ただ、岡部氏が紹介していた「3つのオケが同じテンポで演奏するが急速にテンポが速くなる」部分がどこかは、2回聴いてもよくわからなかった。
 3群あるんだから本当は3回違った場所で聴けばさらに面白かったのだろうが、それは無理というものだろう。それより、NHKが研究用にホールのあちこちに96本ものマイクを設置して録音していたので、こちらに期待したい。放送の予定はないとのことだが、下手にFMで放送するより、様々な場所での録音を聴き比べられるようなCDを出してほしい。何枚組になってもいいので。

 とにかく20世紀音楽の金字塔の一つに数えられる曲に挑んだ指揮者、オケ、財団、ホール全ての関係のみなさんに感謝したい。特にリゲティも振ったマルッキの切れ味鋭い指揮ぶりが印象に残った。これまで敬遠しがちだった現代音楽だし、まだまだ難解なイメージは残るが、この日の演奏会だけでアレルギーがかなりなくなったような気がする。

表紙に戻る