ヴァイグレ指揮読響
〇2026年7月21日(火)19:00〜21:00
〇サントリーホール
〇2階C8列32番(2階中央ブロック8列目上手寄り)
〇ヘンツェ「夢見るセバスティアン」(日本初演)
ベーメ「トランペット協奏曲ヘ短調」Op18(12-10-8-6-4)
+リンドベルイ「ダーラナの夏の牧舎の古い賛美歌」(以上編曲、Tp=マティアス・ヘフス)
R.シュトラウス「アルプス交響曲」Op64(約49分)
(16-14-12-10-8、下手から1V-2V-Vc-Va、CbはVcの後方)(コンマス=林)
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遭難にご注意
常任指揮者ヴァイグレ指揮の読響、今月2つ目のプログラムもドイツ音楽オンパレード。こちらも決して一般受けする曲は少ないのだが、前売は完売、ほぼ満席の入り。
ハンス・ヴェルナー・ヘンツェは今年生誕100年、NHKFMの「クラシックの迷宮」でも取り上げられたばかりだが、それでも日本で演奏される機会は少ない。「夢見るセバスティアン」はオーストリアの詩人ゲオルク・トラークルの同名の詩に基づく最晩年の作品。若くして亡くなったトラークルの生涯と詩にヘンツェは共感するところが少なからずあったようだ。
Cbによる不穏な低音に始まり、様々なテーマが断片的に提示される。調性感のあるフレーズもしばしば耳に入ってくる。管楽器によるテーマはパートごとにまとまって奏するように書かれていて、複雑な構成の割には奏者にとってはやりやすいかもしれない。金管が加わって壮大な響きになっても長続きせず、死や滅びを感じさせる場面も少なくない。最後は短くあっさりしたクライマックスで終わる。今月3曲目の日本初演。
オスカー・ベーメはドレスデン近郊の生まれ、19世紀末からはロシアのサンクトペテルブルク・マリインスキー劇場管弦楽団のコルネット奏者として長らく活躍したが、1930年代のスターリンによる大粛清で命を落とす。本作は1899年A管トランペットのために作曲され、ト短調の曲だったが、A管の衰退に伴い20世紀半ば以降B管のためのヘ短調版による演奏が一般的。
ヘフスは1965年生まれ。18歳でハンブルク州立歌劇場の首席奏者に就任して話題を呼び、ジャーマン・ブラスのメンバーとしても活躍。2000年にはハンブルク音楽大学教授に就任。彼の指導を受けた日本のトランペット奏者も少なくない。
2本のロータリーTpを持って登場。第1楽章、短い序奏に続くソロのメロディ、柔らかな音色と音の跳躍を全く感じさせないレガートに惹き込まれる。後半ハ長調に転じるところで2本目の楽器に変える。おそらくB管とC管を使い分けているのだろう。
第2楽章、序奏で木管が穏やかな祈りのメロディを提示し、一気に盛り上げていく。ソロはここでも平易なメロディを丁寧に歌ってゆく。fの高音が朗々と響いて心地良い。B管を使用。
第3楽章、C管に持ち替える。ヘ長調に転じるのでこの方が吹きやすいのかも。細かいパッセージや急激なアルペジオが次々登場するが、終始軽やかな演奏。一陣のそよ風のように、あっという間に駆け去る。お見事。
アンコールではバスTpみたいな大きめの楽器を持って登場。リンドベルイの賛美歌を、哀愁漂う音色で切々と歌う。
「アルプス交響曲」、「夜」ではFgの下降音型が暗闇を連想させる。TbとTuの和音がかすかな日の光を表現し、徐々に明るくなっていく。「日の出」の全奏に至るまで息長く盛り上げていく。
「登り道」で低弦が力強く歩み始める。狩りのHr合奏はLAブロックの奥から聴こえてくる。「森への立ち入り」の全奏に続くHrとTbの合奏は迫力十分。「滝」の水しぶきもかなり激しく吹き付けてくる。しばし昼間の酷暑を忘れる。
「花咲く牧場」の弦のソロたちも緻密なアンサンブル。「山の牧場」で挿入されるカウベルが心地良い。「氷河」で再び涼感を感じるが、「危険な瞬間」で遭難の危険も頭をよぎるが、いよいよ頂上が見えてくる。「頂上にて」Tp,Tbの高らかなファンファーレに続き、VとVaのメロディが何とも言えない満足感を表現。
ハ長調の豊かなハーモニーが「幻」で嬰ヘ短調に転じ、Tpが不吉なテーマを奏でる。「霧が立ちのぼる」では弦の動きが慌ただしくなる。「哀歌」のオルガンをはっきり響かせる。
「嵐の前の静けさ」から「雷雨と嵐、下山」に至る盛り上げ方も緊迫感に満ちている。とうとうこちらもずぶ濡れに。「日没」の沈む夕日を浴びて、ようやく心が落ち着く。「終結」から最後の「夜」まで、オルガンが効果的に響く。
前半は眼鏡をかけて振っていたヴァイグレ、後半は外して登場。譜面台に一応楽譜は置いてあるが、頭と体が覚えているのだろう。終始自信に満ちた指揮ぶり。読響もフレーズ一つ一つにメリハリを効かせた、充実の演奏。
団員解散後ヴァイグレの一般参賀。期待に違わぬ、酷暑日の納涼演奏会に。「アルプス交響曲」を、冬の定番「第九」に対抗した夏の定番曲にしてもいいかも。
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