シュトゥットガルト室内管弦楽団
〇2025年11月25日(火)19:00〜20:55
〇武蔵野市民文化会館大ホール
〇2階38列22番(2階最前列ほぼ中央)
〇メンデルスゾーン「弦楽のための交響曲第10番ロ短調」(繰り返し実施)、モーツァルト「ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調」K219(トルコ風)(約28分)
+ツェートマイヤー「ロンド」(以上V=トーマス・ツェートマイヤー、「ロンド」のみVc=ニコラウス・フォン・ビューロー)
ツェートマイヤー「弦楽オーケストラのためのパッサカリア、ブルレスケ、コラール」、モーツァルト「交響曲第29番イ長調」K201(約22分、繰り返し全て実施)
+メンデルスゾーン「弦楽のための交響曲第2番ニ長調」より第2楽章
〇トーマス・ツェートマイヤー指揮
(5-4-3-3-1、コンマス=Yu Zhuang、モーツァルトの2曲にはOb、Hr各2がエキストラで客演)
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研ぎ澄まされたアンサンブル
シュトゥットガルト室内管弦楽団と言えば、オールド・クラシック・ファンには懐かしい団体である。カール・ミュンヒンガーの指揮によるバロックの名曲を彼らの演奏で聴き親しんだファンも多いことだろう。この団体が今も活発に演奏活動を続けているとあっては、行かないわけにはいかない。9割以上の入り。
メンデルスゾーンの弦楽のための交響曲第10番は単一楽章。濃い霧がかかったような静かなロ短調の和音で序奏が始まり、徐々に視界がよくなり、ニ長調に転じて上昇音階が天まで達したかと思ったところで、ロ短調に戻り提示部へ。疾走するようなメロディが音楽を引っ張っていくが、提示部の終盤に序奏最後の上昇音階が復活。メンデルスゾーンらしい憂いに満ちたハーモニーと朗らかな響きとがブレンドされた小品を、メリハリの付いたフレージングで聴かせる。
モーツァルトのヴァイオリン協奏曲、当初は4番が予定されていたが、直前に5番に変更。
第1楽章は標準的テンポ。ソリストを兼ねるツェートマイヤーは、オケだけ部分も大半は客席に背を向けて1Vパートを弾く。40小節目以降のソロ、アダージョは繊細な音で丁寧に、46以降のアレグロ・アペルトはスムーズな流れで。しかし、65〜66のVのフレーズをfで弾かせるなど、時折おや?と思わせる解釈も。カデンツァもオリジナルのものと思われる。
第2楽章。冒頭1Vの主題、楽譜通り16分音符2つずつ区切りながら弾かせる。かなりテンポが速く、音楽の流れは軽やかだが、いささかせわしない感じもする。ここのカデンツァもオリジナルだろう。
第3楽章、冒頭8小節のソロに合わせるVとVaは首席のみが弾き、8の3拍目のトゥッティから全員で演奏。主部の典雅な雰囲気と中間部の様々な曲想との対比が見事。特に132以降のトルコ行進曲は躍動感にあふれている。
カーテンコールで客席側に座っていたVc奏者が上手側に移動し始める。舞台スタッフが下手から譜面台を持って出てくる。何が始まる?
アンコールは、ツェートマイヤー自身の曲で、Vcとの二重奏曲。曲名は「ロンド」だが、VとVcの対話のような音楽。ただ、話の中身は相当込み入ったことではないかと勝手に想像。
前半はソリスト仕様で黒シャツ、黒ズボン姿だったツェートマイヤーも、後半は白シャツに黒ジャケット姿。
最初の曲も自身の作曲。パッサカリアはいきなり全員による不協和音の積み重ね。主題がどこにあるのかわからない。そんな重苦しいハーモニーから少しでも逃れたいとばかりに変奏部分のパートが飛び出したり潜り出したりする。
不協和音の持続がようやく収まると、今度は全パートピツィカートによるアンサンブルに。一転して軽快で弾んだ雰囲気に。しばらく続いたところでVaソロが朗々と歌い始め、それに応えるようにアルコのパートとピツィカートのパートが入り乱れてお祭り騒ぎに。
騒ぎが鎮まり、静かなハーモニーから素朴なコラール主題が断片的に立ち現れては途切れる。少しずつ主題が長続きするようになり、最後は全員による整然とした響きに。
カーテンコールでVa首席を立たせる。
モーツァルトの29番、とにかくテンポが速い。第1楽章冒頭、2V以下の弦が主旋律で1Vのフレーズが伴奏のように聴こえるくらい。VをVa以下が同じ主旋律で追いかける13以降はF1のマシンが接近した状態で疾走しているみたい。
第2楽章もとてもアンダンテとは言えないテンポで、正直落ち着かない。
第3楽章も付点のリズムに乗ってどんどん進んでゆく。トリオに入ってようやく少し落ち着く。
第4楽章もテンポの緩みはない。18以降頻繁に登場するスタッカートの切れ味も鋭い。そんな中、36以降の2Vのメロディなど丁寧に歌わせているので、ホッとする。ずいぶん速く感じるけれど、彼らにとって無理なテンポでないことはよくわかる。
メンバーにはコンマスを務めたYu Zhuangや第2Vの堀江普(あまね)など、アジア系の奏者もおり、多様化している。後から台頭してきた古楽アンサンブルの影響も明らかに受けている。しかし、現代楽器による室内オケとしてのスタイルを捨ててはいないし、引き締まった響きと端正なフレージングは、同じ場所で聴いたイ・ムジチとは全くタイプが異なる。むしろツェートマイヤーなどによる現代音楽にも挑戦することで、ハーモニーやフレージングの感覚を研ぎ澄ませていることが、古典派の音楽演奏に反映されているのかもしれない。
アンコールはメンデルスゾーンで締めくくる。第10番と同じロ短調の優美なアンダンテで聴衆の興奮を鎮める。
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