ヴェロニカ・エーベルレ&三浦謙司 デュオ・リサイタル
〇2025年10月16日(木)19:00〜20:55
〇武蔵野市民文化会館小ホール
〇14列18番(最後方から2列目、ほぼ中央)
〇バルトーク「ヴァイオリンのための狂詩曲第2番」、ベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ第9番イ長調」Op47(クロイツェル)(約37分、繰り返し全て実施)
 シューマン「ヴァイオリン・ソナタ第2番ニ短調」Op121(約30分、繰り返し全て実施)
+マスネ「タイスの瞑想曲」


剛と柔の競演

 エーベルレは2006年17歳のときザルツブルグ復活祭音楽祭でラトル指揮ベルリン・フィルと共演して以来日本にもしばしば来日、今や中堅の実力派としての評価が定着。三浦は2019年ロン=ティボー国際コンクールに優勝して俄然注目され、2022年からドイツを拠点に活躍。ドイツ留学途中で音楽の世界から離れるという異色の経験を持つ。
 チケット完売ではないがほぼ満席の入り。

 バルトークの「ラプソディ第2番」、第1曲は「遅く」と指定され、ピアノのニ短調5度の和音の上をヴァイオリンが気だるいメロディを奏でる。途中で動きの激しくなる部分もあるが長続きせず、元の雰囲気に戻る。
 第2曲は一転して軽快な民謡風の舞曲が数珠つなぎのように次々と登場、フィドルのような弾き方で盛り上げていく。最初の腕慣らしにしては相当技巧的な曲で、アンコールのようなノリで弾いていくのが面白い。

「クロイツェル」第1楽章、序奏のテンポは標準的、5小節目から入るPのfpも控え目。18のプレストから一気にテンポを上げるが、36のピアノのアルペジオはさらりと。45以降の8分音符の連続ではまだ軽めのフレージングだが、61以降のVの重音のsfは力強い。81以降のsfの連続もVは1音ずつ際立たせながら弾く一方でPのタッチはまだ軽め。ホ短調に転じる144以降のPがようやく少しスケールの大きなフレージングを聴かせるが、149以降のVがまだまだ不十分とばかりに、強烈なピツィカートでPにプレッシャーをかける。するとPもこれに応えんと、Vのメロディの2オクターブ下を弾く左手のフレーズが強調される。
 展開部に入ってもバリバリ弾いていくVにPが必死に食らいつくような調子で進む。第1主題に戻って一度立ち止まった後の354以降のPの和音も美しいがもう一息パワーが欲しいところ。それに応えるVがまたも重厚な重音でPを鼓舞。
 第2楽章はVも落ち着いたフレージングとなり、Pとのアンサンブルもよりかみ合うように。第1変奏では珍しくVが控え目でPを立てるし、第2変奏でも32分音符の連続を軽快に弾いてゆく。最後のフレーズが1回目ほころびかけたが、2回目は丁寧に収める。ヘ短調となる第3主題ではたっぷり弦を響かせ、瞑想的な雰囲気に。コーダに入る55以降は息長いフレージングが印象的。エーベルレは最後の音をフェルマータで延ばし、弓を離した後も左手のヴィブラートを数秒続ける。
 第3楽章、冒頭のPの和音は柔らかめだが、Vが走り出すと再びPが負けじと追い掛ける。終始エッジを効かせるエーベルレのフレージングを聴きながら、なぜ最初にバルトークを弾いたのか?という疑問に答えが出る。彼女はこの曲を「ドイツ風民俗舞曲」のつもりで弾いているのでは?だからバルトークでウォーミングアップしたのかも?
 対する三浦はある程度それに応えつつもあくまでしなやかさを失うまいとするように聴こえる。なので、最後までガチっとしたアンサンブルにならないところが面白いと言えば面白い。
 
 後半、三浦は前半に来ていたジャケットを脱いで、上は白シャツ姿に。しかも手元の襟を少したくし上げている。
 シューマンのヴァイオリン・ソナタ第2番を生で聴くのは初めて。
 第1楽章、ニ短調4分の3。Vの重音とPの和音の連打、fだがエーベルレはベートーヴェンのときほど力を入れないので、Pとのアンサンブルがしっくり来る。21小節目以降のうねるような第1主題もレガート重視、ベートーヴェンとは明らかに弾き方を変えている。頻繁に挿入される16分音符の上昇アルペジオが印象的。56以降の第2主題もシューマンらしい歌心あるメロディ。
 第2楽章、ロ短調8分の6のスケルツォ。主部はP主導。1つ目のトリオは嬰ヘ短調、2つ目のトリオはロ短調、いずれもVがメランコリックな主題を提示。
 第3楽章、ト長調8分の3。Vがピツィカートで提示するコラール主題による4つの変奏。主題自体はあまり変奏せず、その周囲の伴奏パートが発展してゆく。第4変奏のPによるアルペジオの連続が美しい。
 第4楽章、心の動揺を描くような動きのある第1主題、それをなだめようとする第2主題、しかし動揺は収まらず、VとPの掛け合いが愛への憧れをふくらませてゆく。最後はニ長調に解決して華やかに終わる。
 三浦のPはシューマンの方が明らかに合っている。細かいパッセージを滑らかに奏でることで音楽の波を創り出してゆく。エーベルレもベートーヴェンのときより音楽の流れを重視するとともに、メロディをよりロマンティックに歌わせる。

 アンコールでは聴衆の興奮を鎮めるかのような「タイスの瞑想曲」。終盤の低音域のフレーズ、G線の響きに聴き惚れる。

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