ヴァイグレ指揮読響
〇2025年6月29日(日)14:00〜15:45
〇オペラシティ・コンサートホール
〇3階R2列6番(3階上手バルコニー最前ブロック)
〇ロッシーニ「ウィリアム・テル」序曲
ヴァインベルク「トランペット協奏曲変ロ長調」Op94
+シャルリエ「36の超絶技巧練習曲」より第1番(以上、Tp=児玉隼人)
サン・サーンス「交響曲第3番ハ短調」(約37分)
(14-12-9-8-6,下手から1V-2V-Vc-Va、CbはVcの後方)(コンマス=石上真由子)
オルガンの音圧が顔にまで
今月は常任指揮者のヴァイグレが3つのプログラムを振るのだが、ことごとく予定が合わず、辛うじて最終公演となる日曜マチネに滑り込む。チケット完売、ほぼ満席の入り。
「ウィリアム・テル」序曲、冒頭のVcソロ(首席の富岡)とそれに合わせる3人のVc奏者、続くEHrソロ、それに応えるFlソロとスムーズな流れ。後半の行進曲も整然とした響き。カーテンコールではVc4人とEHr、Fl首席(ドブリノヴ)を2度ずつ立たせて称える。
ヴァイベルクを吹く児玉は今月16歳になったばかり。昨年日本管打楽器コンクールトランペット部門で史上最年少で第1位になるなど、注目されている。
第1楽章、いきなりTpが装飾音風に上昇するソロを吹き始め、これにオケも応える。冒頭のモチーフがしつこく繰り返され、オケもしつこく応える。
第2楽章、弱音器を付けたTpの響きが、暗く落ち着かない雰囲気を醸し出す。
第3楽章、鐘の音を合図に、過去の作曲家がTpのために書いたファンファーレがコラージュとして現れる。マーラーの交響曲第5番、メンデルスゾーンの「結婚行進曲」など。だんだんTpに絡む楽器が少なくなり、Tpと打楽器による心細い対話が続いた後、それを打ち切るようにTpがBを吹いて終わる。
難曲を苦もなく吹いていくのはもちろんだが、艶やかで男の色気を感じさせる音色が特徴的。
アンコールも簡単そうに聴こえるのだが、よくよく聴けばとんでもないフレーズの連続。
「オルガン付」第1部前半、冒頭の弦楽合奏を丁寧に響かせる。やや遅めのテンポ。提示部のクライマックスが徐々に衰えていく78〜81小節目の弦、80にディミニエンドの指示があるが、ヴァイグレは構わず強調させる。
第1部後半、ほぼ標準的テンポ。403以降の1Vと2Vの掛け合いが美しい。アダージョのテーマが回帰する439以降、Cb以外の弦はアルコとピツィカートに分かれるが、ピツィカートもしっかり主張。最後のオルガンの和音をかなり長く延ばす。
第2部前半、やや遅め。弦の第1主題はfだがレガートを維持させ、ガシガシした感じは皆無。木管合奏に応える55以降の弦も同様。後半へのつなぎ部分の340以降の弦楽合奏も繊細な響き。
第2部後半、ほぼ標準的テンポ。オルガンの和音に応える377以降の第1主題、あまりアクセントを強調せず落ち着いた歩み。終盤650以降のPesanteで思い切ってブレーキをかける。最後の全総ではオケ全体を両腕で前に押し出すような仕草で盛り上げる。
全体的にはドイツ風の重厚な和音を響かせつつも、音楽の流れは終始淀みがない。
今回敢えてオルガンの間近の席を取ったが、予想通り床から足や腹へ響いてくるだけでなく、低音のパイプの音波が顔にまで届いてきて、なかなか快感。ただ、金管や打楽器も床から伝わってくるので、オルガンの響きに酔うにはサントリーホールのPブロックの方がいいかもしれない。
カーテンコールでヴァイグレはソロで活躍した奏者だけでなく、ゲストコンミスの石上も立たせる。