Nikikai Days@Blue Rose 2019 第3日奇跡の”驚”演 「フィガロの結婚」ダイジェスト版
○2019年6月23日(日)14:30〜16:10
○サントリーホール ブルーローズ
○2列20番(2列目上手側)
○フィガロ=黒田博、スザンナ=澤畑恵美、伯爵=大島幾雄、伯爵夫人=大倉由紀枝、ケルビーノ=井坂惠、バルトロ=池田直樹、マルチェリーナ=岩森美里、ドン・バジリオ、ドン・クルツィオ=福井敬
○P=藤川志保


人間国宝級歌手たちの”驚”演

 二期会がサントリーホールの小ホール(ブルーローズ)で、オペラの魅力を楽しめるコンサートを3回にわたって企画。この日はその最終日。ほぼ満席の入り。

 下手端にピアノ。第1幕は上手にシーツのかかった椅子1脚のみ。
 ダイジェスト版なので編集が苦心のしどころだが、まずケルビーノが舞台中央に現れて、フィガロの結婚式が行われた翌日を振り返る。そこへバルトロも登場し、フィガロとは実は親子だったとネタバレをする。
 2人が退場した後、フィガロとスザンナの二重唱→バルトロとマルチェリーナのやり取り→バルトロのアリア→スザンナとマルチェリーナの二重唱→ケルビーノ登場し、椅子の中に隠れるシーン→伯爵、バジリオと登場し、三重唱→フィガロ、スザンナ、ケルビーノの3人になりフィガロのアリアで終わる。

 第2幕は中央に椅子が2脚並べられ、夫人が下手に向かって座っている。ケルビーノが現れて夫人と一緒にいると上手から伯爵が呼びかけるシーンから始まり、伯爵、夫人、スザンナの三重唱→スザンナとケルビーノの二重唱→伯爵と夫人の二重唱→伯爵、夫人、スザンナの三重唱→フィガロも加わって四重唱→フィガロが結婚式を挙げるよう伯爵に求めるところで前半終了。

 第3幕、下手に手紙を書く台。ケルビーノが登場して導入のセリフを述べた後、スザンナが伯爵に薬をもらいに来るシーンから始まり、スザンナと伯爵の二重唱→伯爵のアリア→伯爵、クルツィオ、フィガロ、スザンナ、バルトロ、マルチェリーナの六重唱→夫人のアリア→夫人とスザンナの二重唱まで。

 第4幕は中央に、横に並べられた椅子2脚にシーツが被せてある。そこでヴェールを被って待つ夫人。そこへケルビーノが通りかかるシーンから始まり、伯爵、夫人、フィガロ、スザンナ、ケルビーノの五重唱→伯爵と夫人の二重唱→フィガロとスザンナの二重唱→全員による八重唱で幕。

 つまり、フィガロの第1幕最初のアリア、第4幕のアリア、スザンナの2つのアリア、ケルビーノの2つのアリア、夫人の第2幕のアリアなど、有名な曲が大幅にカットされている。知っている曲目当てに来た客にとってはがっかりだろうが、アリアばかりだと話が先に進まないので、苦渋の決断だろう。
 出演者たちはみな舞台経験豊富で、歌も演技も慣れたもの。黒田と澤畑の息の合ったやり取りを中心に、どの場面も楽しく観られる。特に池田と福井の弾けぶりが群を抜いて面白い。福井は普段はワーグナーなど重厚な作品ばかり歌っているから、バジリオやクルツィオなんて楽しくて仕方がないという感じ。その意味では、重唱中心にすることで、出演者たちの魅力をより引き出せたと言えるだろう。

 歌は日本語、まずまずわかりやすい。ただ、少しテンポを上げた方がいいナンバーがいくつかあった。日本語の歌詞で単語数が減る分、余計間延びして聴こえるのは惜しい。
 
 カーテンコールで大倉さんが挨拶。「平均年齢61歳」との発言に聴衆どよめく。確かに、30年前でも通用するキャスト。中には、一度座ると立てなくなるので、立ちっぱなしで歌っていた出演者もいたそうだ。言わば二期会の「人間国宝」たちの顔見世という、文字通り”驚”演となった。この組合せが将来また実現するか?みなさん、いつまでもお元気でいてほしいと願わずにはいられなかった。

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