サラダ音楽祭メインコンサート<プルミエ・ガラ>
○2018年9月17日(月・祝)19:00〜21:10
○東京芸術劇場コンサートホール
○3階D列22番(3階4列目やや下手寄り)
○古関裕而「オリンピック・マーチ」(小池百合子指揮)
 J.シュトラウス2世「こうもり」より「僕はお客を呼ぶのが好きだ」(12-10-8-6-4)、ニーノ・ロータ「ハープ協奏曲」第1楽章(10-8-6-4-2)、ラヴェル「ラ・ヴァルス」
 オルフ「カルミナ・ブラーナ」
CT=藤木大地、Hp=吉野直子、S=光岡暁恵、Br=小森輝彦
〇大野和士指揮都響(14-12-10-8-6、下手から1V-2V-Vc-Va、CbはVcの後方)(コンマス=矢部達哉)、新国立劇場合唱団(44-36)、東京少年少女合唱隊
〇振付・ダンス:近藤良平、ダンス:コンドルズ

音楽を忠実に身体の動きへ

 TOKYO MET SaLaD MUSIC FESTIVAL 2018(サラダ音楽祭)は、2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会の機運を盛り上げるために始まった新しい音楽祭である。"SaLaD"は音楽祭のテーマであるSing and Listen and Dance!!(歌う!聴く!踊る!)を略したもの。「サラダ」と呼ぶことで何だか身体にもいいのではないか?というイメージもわいてくる。昼間にはほぼ同じメンバーで赤ちゃんも参加できるミニ・コンサートがあった。ほぼ満席の入り。

 まずは小池知事が大野から「3分特訓」を受けた成果をオリンピック・マーチで披露。金色の上着に金色のリボンが指揮棒に結び付けられている。

 木佐彩子の司会で前半は進む。オケの団員交代やソリストの準備の時間を利用してのトークだが、少し尺が合わない場面も。
「こうもり」のオルロフスキーのアリアをカウンターテナーで歌うとなると、すぐヨッヘン・コワルスキーを思い出す。藤木の声はコワルスキーほどの色気はないが、気品のある声。
 ニーノ・ロータのハープ協奏曲は、いかにもイタリアらしい明るさに満ちた曲。太陽の光が優しく降り注いでくるような感じ。1楽章だけではもったいない。
「ラ・ヴァルス」は大野らしいきびきびした演奏。各曲の紹介はプログラムに書かれてはいるが、司会からひと言くらい紹介があってもいい。

 何と言ってもこの日のお目当ては後半。「カルミナ・ブラーナ」に近藤良平&コンドルズのダンスが加わる。オケの団員たちが並ぶ手前のスペースに木製の丸椅子(スタッキングチェア)が6脚、横1列に並んでいる。
 学ランのような黒の上下のダンサーたちが登場。第1曲、序奏の後の5小節目から始まる4つの音符のフレーズに合わせて両足を左右にステップさせる。
 第2曲「運命は傷つける」では正面に向かって座ってうなだれた姿勢から、Tpのフレーズに合わせて両腕を振り上げ、また元の姿勢に戻り、立ち上がって椅子に両手を触れた姿勢でくるりと回る。1人椅子を倒してしまうアクシデント。
 第1部に入ると6人は椅子を持って下手端へ。第3曲「春に」では、音楽に合わせてまず2人、戻ると入れ替わって3人、戻ると最後に近藤1人で踊る。その後舞台に下がるが、第6曲「踊り」で再登場、客席に降りる場面も。第9曲「輪舞」では6人が手をつないで輪になり、つないだまま裏返しになり、また元に戻る。
 第1部が終わったところで舞台下手バルコニーに東京少年少女合唱隊、舞台に光岡と藤木が登場。
 第2部、第12曲「焙られた白鳥の歌」の前から、藤木は死んだように、椅子の背もたれに上半身をもたれかけた姿勢。出番になると立ち上がって歌うが、歌い終わって座るとまた同じ姿勢でしばらく静止。下手から登場した女性ダンサーのソロ。
 第13曲では白のガウン姿の男2人が両端から登場してもったいぶった動きの踊り。
 第3部では男性6人が客席に散らばって踊ったり、集まって最前列の客に向かって訴えかけたり。第17曲「赤い胴着の乙女が立っていた」で赤いロングのワンピース姿の女性ダンサーが登場。彼女を両端から現れた男性6人が取り囲み、ちょっかいを出し、持ち上げる。
 フィナーレでは7人が横1列に並んで第1曲と同じ振付で踊るが、最後は全員舞台下に飛び降りる。

 光岡は伸びのある清楚な声で、第23曲「私のいとしい人」の最高音も無難に聴かせる。小森は小林大祐の代役で登場。終盤さすがに疲れを見せたものの、少しドスの効いた声で盛り上げる。藤木のソロは通常テノールが歌うが、こちらもファルセットでないと出せない高音があり、カウンターテノールの方が合っているかも。
 大野の指揮はいつもの安定感があり、オケから鮮烈な響きを引き出す。新国合唱団、東京少年少女合唱隊の引き締まったハーモニーとも相性抜群。
 コンドルズのダンスには、「サラリーマン体操」を思い出させるコミカルな部分もあったが、全体的には音楽を忠実に身体の動きへと移し替えているような感じ。安心して観ていられる半面、もう少し冒険があってもよかったかも。

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