都響スペシャル「第九」
○2017年12月25日(月)19:00〜20:25
○東京文化会館
○5階R2列2番(5階上手サイド2列目中央寄り)
○ベートーヴェン「交響曲第9番ニ短調」Op124(約68分、第2楽章繰り返し実施)
〇S=林正子、MS=脇園彩、T=西村悟、B=大沼徹
〇大野和士指揮都響(16-14-12-10-8、下手から1V-2V-Vc-Va、CbはVcとVaの間の後方)、二期会合唱団(44−36、指揮:増田宏昭)

生気あふれる「第九」

 近年は年末だからと言って「第九」を聴きに行くこともない状態が続いていたが、大野和士指揮となれば話は別。ほぼ満席の入り。

 木管は倍管、ティンパニは4台。合唱団員はオケと共に入場。
 第1楽章、ほぼ標準的なテンポか。2〜4小節目の1VのE−Aと4〜5のVa,CbのE−Aがしっかり対になって示される。63以降の1Vのフレーズにかぶる64以降のHrのフレーズが力強い。92〜93でVの下降音型にVaとVcの上昇音型ががっちり絡んで94で合流するあたりがたまらない。これを聴かせたくて弦を対抗配置にしなかったのかも。146以降の木管の響きも豊か。倍管の効果抜群。
 展開部218以降の二重フーガもCbと2Vを対等に響かせながら進む。301以降ティンパニの長いトレモロが続く場面、304,308,310でクレッシェンド。
 499のVa以下は、最初から音量を抑えずクレッシェンドを効かせる。

 第2楽章、5のティンパニは下手から2つ目と4つ目を叩くが、195以降は2つ目と3つ目、つまり内側の2つを叩く。272以降の連打は控え目。
 148〜150などのGPでは指揮棒を止める。
 トリオの426以降もOb,Clのメロディとこれに対するFgのフレーズを対等に響かせる。

 第2楽章が終わったところで打楽器奏者とソリストが入場。パラパラと拍手。

 第3楽章、19〜20のティンパニは下手から1つ目と3つ目を叩く。転調前の23〜24、V,Vaの32分音符のフレーズを丁寧に聴かせる。続く25以降の2VとVaのメロディがホールの左右いっぱいに広がる。これも対抗配置にしなかった理由かも。
 2回目の転調前の63〜64のV,Vaも同じように弾かせるが、64の2拍目以降は3連符になるので、「ザララッ」とした感じになり、ちょっとじらされる。しかし、これがまた心地よい。
 2回目のファンファーレが終わった133以降からテンポが遅くなり、そのまま最後まで行く。

 第3楽章が終わった後も少し間を取る。

 第4楽章、はやる馬の手綱を引き締めるように、冒頭からきっちり3拍子を刻みながら進む。歓喜の主題が登場する92以降の低弦、p1つなのではっきり聞こえる音量で開始。115以降の二重フーガもVa,VcとFg,Cbをかっちり組合せながら発展させてゆく。
 282のソリストと290の合唱は指示通りだんだんディミニエンドで、急に音量を落とさない。
 合唱が戻ってくる前の525以降のHrの8分音符がときどきつながって聞こえる。
 そして、655以降、ここまでしばしば登場した二重フーガの総決算のように合唱が響かせる。少しテンポを落とす。
 Prestissimoになる850に入っても少し速め程度のテンポを維持し、合唱が歌い終わった920以降で一気にテンポを上げてたたみかける。

 演奏前の念入りなアナウンスにもかかわらず、拍手のフライング多数。Hr首席、木管首席、ティンパニ、ピッコロ奏者を立たせる。

 隅々まで血が通った音、生き生きとしたフレージング、釘がなくても固定される木工細工のようなアンサンブル。オケの響きは終始安定した充実ぶり。
 普段は奔放なハーモニーになりがちな二期会合唱団も、この日はオケと一体化。こんな引き締まった声と安定したアンサンブルを聴かせる二期会は初めてかも。
 惜しかったのはソリストたち。経験不足というわけでもあるまいが、西村がまずまずの歌を聴かせたものの、林は響きが不安定、脇園と大沼は存在感が薄い。
 何はともあれ、大野の生気あふれる中にも貫禄を感じさせる指揮ぶりが拝めてよかった。

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