山田和樹指揮東フィル
○2012年2月4日(土) 15:00〜17:05
○狛江・エコルマホール
○Q列38番(最後方から4列目上手端)
○リスト「ハンガリー狂詩曲第2番嬰ハ短調」、メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」Op64(V=依田真宣)(約28分)、ブラームス「交響曲第1番ハ短調」Op68(約44分、第3楽章のみ繰り返し実施)
+モーツァルト「フィガロの結婚」序曲
 (12-10-8-8-6)(下手から1V-2V-Vc-Va、CbはVcの後方)(首席奏者:コンマス=荒井、Ob=小林)

ホールとオケの微妙なバランス

 私の住む狛江市には駅前ビルの上にエコルマホールという728席の多目的ホールがある。人口8万人弱の市の公共ホールとしては分相応の規模かもしれないが、この客席数ではどうしてもピアノや室内楽のコンサートが中心になる。しかし、年に数回はオーケストラのコンサートがあり、今回はその貴重な1日。普段はどこにいるのかわからない市内の音楽ファンもそれを知ってか、ほぼ満席の入り。

 リストの「ハンガリー狂詩曲第2番」はかつてこの手の名曲コンサートや学校の鑑賞教室などでよく演奏されたものだが、いつの間にかめったに取り上げられなくなった。前半は半音下げて演奏。Clソロで息が漏れがちに。後半になると、飛び上がらんばかりの指揮ぶり。こうやって生でやってくれると、懐かしい気分になる。

 メンデルスゾーンのソロを弾く依田は2006年第4回東京音楽コンクール弦楽部門第2位、20代後半の若手。黒のシャツとズボン姿。
 第1楽章、やや遅めのテンポ。中低音の鳴りに少々ムラがある。カデンツァを遅く始め、後半のアルペジオの連続になってもまだテンポを上げず、オケが加わる直前あたりでようやく元のテンポに戻る。
 第2楽章、テンポは速めだがフレージングは慎重でまだ歌いぶりに硬さが残る。
 第3楽章はほぼ標準的テンポ。ようやく少し弾む感じに。終盤の最高音のEを次のオクターブ下のEにつなげて弾く。
 各楽章ともいくつかの部分に分けて練習し、それを通して演奏したが部分ごとの切れ目が完全に消えていないのか、切れ目らしきところで音楽の流れも一旦止まる感じがする。

 ブラ1第1楽章、1発目のティンパニを少し長めに叩かせる。テンポはほぼ標準的。9〜11小節目の木管の和音が1音ずつ切れる。25以降Cbの刻みを強調。第1主題に入る38以降やや速めに。130以降のObソロはレガートを保つ。奈落の底から這い上がり始める193以降テンポを落とす。462以降の盛り上がりはあまり切迫した感じにならない。終わっても客席からほとんど咳が出ない。
 第2楽章、ほぼ標準的テンポ。淡々と進める。90以降のヴァイオリン・ソロに合わせるHrが不安定。103〜104は周りがやや大き過ぎてソロが消されがちに。最後の127〜128にかけてのオケの音の切り方も揃わず、ソロだけきれいに残らず。
 第3楽章もほぼ標準的テンポ。ヘ短調になる45以降もあまり曲想変わらず。終盤の154以降ややテンポを落とす。指揮棒を上げたまま第4楽章へ。
 第4楽章、やや遅めに始める。8以降のピツィカート、あまりテンポを上げない。61の第1主題の最初のGを少し長めに弾かせる。94以降テンポを上げる。ト長調に転じる114からやや遅くなる。268のHr、2回目のB−A−Bが乱れる。山場になる285以降ややテンポを落とす。301以降ややテンポを上げる。終盤の391以降Piu Allegroになってもテンポはほとんど変えない。434などのティンパニは特に強調しない。
 700席強の客席で天井の低いホールで弦の数を絞ったとは言えフルオケの演奏となると、やはり音量が大きくなるほど上から押え付けるような感じの音になるのはある程度仕方がない。元々響きがデッドな上満席となるとますます残響が短くなるので、特に管楽器の音の切り方がよくわかる。よほどうまく息を流さないとレガートに聴こえない。

 アンコールの「フィガロの結婚」でようやく明るく開放感ある演奏に。

 山田和樹は2009年第51回ブザンソン国際指揮者コンクール優勝者。きびきびした指揮ぶりだが、特にブラ1では第1楽章で指揮者が徹底したはずの指示が、曲が進むに連れて若干緩んでくる。このあたりが今後の課題だろう。
 やはりこのホールには室内オケくらいまでの規模の演奏がいいのかもしれない。

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