ラトル指揮ベルリン・フィル(6回公演の2回目)
○2008年11月25日(火) 19:00〜21:05
○サントリーホール
○2階P6列16番(2階ステージ後方4列目中央やや上手寄り)
○ブラームス「交響曲第1番ハ短調」Op68(約44分、第3楽章のみ繰り返し)
 同「同第2番ニ長調」Op73(約38分、繰り返しなし)
 (16-14-12-10-8)(下手から1V-Va-Vc-2V、Cbは2Vの後方)
 (首席奏者:コンマス=安永、第2V=スターデルマン、Va=レーザ、Vc=ファウスト、Cb=シュトール、Fl=パユ、Ob=マイヤー、Cl=フックス、Fg=ダミアーノ、Hr=ドール、Tp=ヴェレンチャイ、Tb=オット)

ラトルとBPOは仲良しクラブか?
 
 ラトル率いるベルリン・フィルはワシントンで1回聴いたが、日本で聴くのは初めて。当然ながらほぼ満席の入り。コンマス安永さんにとっては最後の日本公演だそうだ。ヴィオラの次席に清水さんも座る。

 ブラ1第1楽章、やや速め。メロディ・パートよりCbの刻みを意識しながら振っている。42小節以降の第1主題、力強い響きだがメロディの流れは軽快な感じすらする。89以降もあまり重く鳴らさず、97以降の弦のアクセントも控え目。やがて音楽が落ち着いてきたところで、ハプニング。148で入るはずのClソロが1小節早く入ってしまったのだ!Hrが冷静に正しい箇所で入ったので続くClも復帰できたのだが、聴いているこちらはびっくり。この楽章が終わるまでハラハラし通し。88年カラヤン最後の日本公演では177以降のHrの大音響に度肝を抜かれたものだが、今回は行儀よくアンサンブルの中に収まっている。293以降の長い<や321以降の全奏もややおとなしい感じ。その後も音楽の流れはスムーズだが、気を付けないとこちらはBGMを聞いているような気分になる。
 第2楽章、ほぼ標準的テンポ。しかし9〜11の1V、少しテンポを落として同じ音型の繰り返しを丁寧に歌わせて次につなげる。しかし、聴かせどころの28以降の1Vは、テンポを変えずあっさりめに歌わせる。90以降安永さんのソロが始まると、一気にカラヤン時代へ戻る。あの強くしなやかで輝かしい響き。あれこそ僕たちが覚えているベルリン・フィルの弦である。
 第3楽章、ほぼ標準的テンポ。あまり振らずに団員たちに任せているが、45以降はテンポを刻む低弦の方を向きながら振る。71以降も任せる場面が多い。
 第4楽章、やや速め。冒頭の<と全奏もおとなしめ。28のティンパニも豊かな音だがびっくりするような強打ではない。61以降の第1主題も低弦のピツィカートを意識しながら振っている。92以降の全奏でややテンポを上げる。しかし、流れは軽やかで聴いている方の気分がなかなか盛り上がらない。88年日本公演では聴衆1人1人に焼き印を押すかのように、異常なスロー・テンポで重厚に弾かせた279〜284もいともあっさり通過。300の低弦とコントラ・ファゴットのA−Bはさすがにはっきり聴かせる。その後もなかなか気分が盛り上がらなかったが、391以降ようやくパワー全開。397や399のVなど少々荒っぽいくらいに鳴らしてくれて喜んだのも束の間、427と429で一旦音量を落としてから<をかける。ここまで来たら気ィ抜かんとずっとフォルテで弾かんかい!最後の音もフェルマータをかけずに切る。

 カーテンコールでは、Clのフックスが後ろのドールと前のパユから冷やかされているのか、必死で言い訳しているように見える。その一方でドールとダミアーノはちゃっかり握手。

 ブラ2第1楽章、冒頭の低弦のD−Cis−Dの音型はゆったりだが続くHrは軽快に進む。同じテンポなのだろうが違って聴こえる。その後は速めのテンポで、あちこちの小川が集まってやがて大河になるように淀みなく進んでゆく。提示部繰り返さず181〜182にかけて少しテンポを落としpppくらいにするが間は入れずにHrソロにつなげる。227〜228などの全奏はそれなりに鳴るが、やはり圧倒的な感じではない。その後も過度にリズム・パートを強調することもなく、淡々と流れてゆく。
 第2楽章、やや遅め。珍しくメロディ・パートのチェロに向かいながら歌わせる。その流れを12以降のVに受け継がせてゆく。その後も流麗に進み、87以降もやや冷めた盛り上がり。しかし、終盤99〜102はぐんとテンポを落とし、ずっと弱音のまま弦を歌わせる。
 第3楽章、ほぼ標準的。33以降テンポを上げるが、ほとんど振らずにオケに任せている。126以降も同様。218で少しテンポを落として間を長めに取る。
 第4楽章、やや速め。23以降の全奏もおとなしめ。40でも一旦音量を落としてから<をかける。122以降もほとんど振らない。184以降の盛り上がりを事もなげに進めていくところはさすが。325以降もほとんど振らず、341から1拍目だけ振るが343ではそれすら省略。387以降テンポは上げないが、ようやく金管がこれまでにない音量で吹き始め、最後の最後にホール中が鳴り響くが、ここでも最後の音はフェルマータをかけずに切る。

 オケを早々と解散した後ラトルが2度ステージに呼び出される。

 中くらいの苦悩から中くらいの歓喜に至る1番、明るい喜びに満ちているがどこかのんびりした2番。ラトルは3分の1から半分くらいは団員に任せているように見える。団員たちも悪い気分はしていないようだ。仲良しクラブのように見える両者だが、果たしてこれが真の姿なのか?次回の演奏を聴いて改めて考えたい。

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