N響ほっとコンサート
○8月3日(日)16:00〜18:05
○NHKホール
○3階C5列13番(3階正面5列目下手寄り)
○梅田俊明指揮
○司会:高橋美鈴
○ブリテン「マチネ・ミュジカル」より「行進曲」、
オッフェンバック「天国と地獄」より「ギャロップ」、J.シュトラウス2世「アンネン・ポルカ」、チャイコフスキー「エフゲニ・オネーギン」より「ポロネーズ」、モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」より第1幕舞踏会の場面の音楽、ボロディン「イーゴリ公」より「ダッタン人の踊り」
(吹奏楽曲)ビリック「ブロックM」、V.ウィリアムズ「イギリス民謡組曲」
ラヴェル「ボレロ」
 (吹奏楽曲を除き16-14-12-10-8)
 (下手から1V-2V-Vc-Va、CbはVcの後方)
 (首席奏者:コンマス=篠崎、第2V=永峰、Va=不明、Vc=藤森、Cb=西田、Fl=不明、Ob=茂木、Cl=横川、Fg=岡崎、Hr=不明、Tp=津堅、Tb=新田、ティンパニ=植松)

年に一度、N響が身近になる日
 
 N響の夏の風物詩としてすっかり定着した感のある「ほっとコンサート」。これまではテレビで観ていたが、今回初めてNHKホールまで足を運ぶ。14時からロビーで行われる楽器体験工房では、どの楽器コーナーも長い行列。いつもはステージやテレビでしか観られないN響の知った顔をあちこちで、しかも間近で見ることができる。15時過ぎに着いたらトロンボーンにしか行けなかった。でもそこで「N響アワー」の池辺さんに岩槻アナを発見。
 親子連れが多いのはもちろんだが、吹奏楽目当てか、中高生が団体で席を占める風景も目立つ。8割程度の入り。

 今回は「リズミカル マジカル クラシック」と題して様々なリズムの舞曲を演奏。まず一番わかりやすい行進曲、続いて同じ2拍子でも速さの異なる「ギャロップ」と「フレンチ・ポルカ」を続けて演奏した後、3拍子の舞曲としてワルツでなくあえてポロネーズを取り上げる。しかし、前半の目玉は「ドン・ジョヴァンニ」から第1幕終盤、ドン・ジョヴァンニが自分の屋敷で開く舞踏会でツェルリーナを誘惑しようとする場面。団員の一部が舞台前面の上手と下手に分かれて立ち、宮廷音楽のメヌエット(4分の3)、市民階級の間で流行のコントルダンス(4分の2)、マゼットなど農民に親しまれるドイツ舞曲(8分の3)が同時に演奏される様子を、各パートごとの演奏も織り交ぜながら紹介。今までなんとなく聴いていた場面がこんな複雑な構造になっていたとは知らなかった。
 前半最後は「ダッタン人の踊り」で賑やかに閉じる。ちなみに「ダッタン人」というのは誤訳で正確には中央アジアの遊牧民族、ポロヴェツ人の踊りだそうだ。ここまでは高橋アナと指揮の梅田さんとのトークが曲間にはさまれる。

 後半はまず舞台前半分を中心に管楽器奏者が並んで吹奏楽。N響メンバーが吹奏楽をやるというのでこれまた毎回話題になるのだが、曲の合間に高橋アナが吹奏楽部出身の横川、津堅両首席にインタビューし、当時の練習ぶりなどを紹介。オケの時には休みの多い管楽器奏者にとって吹奏楽は出番が多くなかなか楽ではないらしい。ビリックの曲はいかにもアメリカらしい陽気な行進曲、V.ウィリアムスの曲はその名のとおりイギリスの民謡(と言っても知らない曲ばかりだが)のメロディが随所に現れ、素朴な曲風。N響を中心とするメンバーが演奏すると、どこか端正な響きになる。
 元のオケの配置に椅子や譜面台を戻す時間を利用し、今度は高橋アナが作業中のステージ・マネージャーの多戸さんに声をかける。一度は忙しいと断った彼だが、再度の呼びかけに舞台前方へ。スタッフの役割分担や多戸さん自身の失敗談など裏方の苦労ぶりも紹介。続いてコンマスの「まろ」こと篠崎さんにもインタビュー。その間に団員が揃う。最後の「ボレロ」は速めのテンポで進み、終盤は文字通り「ほっと」に盛り上がる。指揮者がスネアドラム奏者やソロを吹いた奏者たちを1人ずつ立たせる。退場して再び出てくると、それをもう一度繰り返す。

 昨年は「まろ」によるミニ・ヴァイオリンのソロといった「かくし芸」を楽しめたが、今年は知的なプログラムで、選曲も一ひねりしている。ヴィオラ、フルート、ホルンの首席はいずれも若い奏者だった。
 終演後の楽器体験工房にも多くの客が残っていた。子どもだけでなく、中にはオーボエで屋台のチャルメラのメロディを吹いて興奮するおじさんの姿も。定期公演では聴けない曲目のコンサートだけでなく、その前後にこれだけ長時間楽器に触れる機会を設けているのがすばらしい。来年はもっと早く行かねば。

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