ラ・フォル・ジュルネ ペーテル・チャバ指揮フランス国立ロワール管
○2008年5月5日(月・祝) 14:30〜15:15
○東京国際フォーラム Hall A(Spaun)
○2階18列53番(2階後方から9列目ほぼ中央)
○シューベルト「交響曲第7番ロ短調」D.759(未完成)
(第1楽章提示部繰り返し)
 ベートーヴェン「レオノーレ」序曲第3番Op72b
 (13-10-10-7-5)(下手から1V-2V-Va-Vc、CbはVcの後方)

ラ・フォル・ジュルネは吉野家に勝てるか?
 
 ゴールデンウィークの行楽先としてすっかり定着した感のあるラ・フォル・ジュルネ。1年目からテレビで観てはいたが、恥かしながら実際に行くのは今回が初めて。5000席のホールがほぼ満席の入り。「ゴールデンウィークは不入り」が常識だった日本のクラシック音楽界において、1回の演奏会でこれだけの客を集められるだけでも、この音楽祭がいかに革命的なことを成し遂げたかがよくわかる。

 「未完成」第1楽章、序奏はやや遅めのテンポだが第1主題は少し速め。第2楽章はほぼ標準的なテンポか。
 コントラバス奏者は当然のようにフレンチ・ボウ、つまり楽器を少し寝かせて弾いている。クラリネットの穏やかで明るい音色が印象的。全体的に上品な音色で音楽の流れも自然だが、僕の席まで音が十分飛んでこないし節回しもはっきりしない。
 「レオノーレ」は終始速めのテンポ。ホルンが4人に増えて少し迫力が出てきたが、やはり物足りない。

 でもこれはオケのせいではない。弦の人数はフランスの地方オケとしてはおそらく普通の規模なのだろう。管もオリジナル通りの編成。いかんせんホールがでか過ぎる。オケの人数を増やすこともできたのだろうが、そうなるとこのオケ本来の響きが損なわれると考えたのだろう。その判断が間違っているとは言えない。
 ただ、多くの客が初めて生のオケの音に触れたのだと考えれば、彼らはおそらく「きれいだった」以上の感想は持たなかったのではないかと思う。「当日会場でチケットが買える」ことが売りで始まったラ・フォル・ジュルネだが、ピアノ、室内楽、歌曲の公演は前売でほとんど売り切れ、実際に買えるのはここか約1500席のホールCの公演しかない。
 そこで聴ける演奏の善し悪しを判断するには、吉野家の牛丼との比較が一番である。すなわち「早い、安い、うまい」か?
 1時間のプログラム=「早い」、チケット代は大人で2000円か1500円=「安い」、この2点に関しては申し分ない。となればあとは「うまい」かどうかである。
 これに関しては、確かにそこそこの料理が出されてはいたが、大皿の中央に少しだけ盛り付けられていたという感じ。オーケストラの醍醐味を味わうところまで行かなかったことが惜しい。

 この音楽祭全体に関しては他にも書きたいことがあるが、それは機会を改めることにしたい。

表紙に戻る