スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ読売日響
○2008年4月18日(金) 19:00〜20:25
○サントリーホール
○2階RA4列16番(2階上手サイド4列目中央やや奥寄り)
ブルックナー「交響曲第5番変ロ長調」(約69分)
 (16-14-12-10-8)(下手から1V-2V-Vc-Va、CbはVcの後方)(Hr=5, Tp=4)
 (コンマス=藤原、第2V=清滝、Va=生沼、Vc=毛利、Cb=星、Fl=一戸、Ob=蠣崎、Cl=藤井、Fg=吉田、Hr=山岸、Tp=長谷川、Tb=山下、ティンパニ=岡田)

ブルックナー、ただいまお色直し中
 
 スクロヴァチェフスキが読売日響の常任指揮者に就任して早や1年。得意のブルックナーを取り上げるとあって、雨天にもかかわらずほぼ満席の入り。就任披露の時には4番を取り上げたが、弦は対抗配置だった。ただあの時は前半にベートーヴェンの「大フーガ」をやったので、そのためだろう。
 版については、4番の時は「ノヴァーク版」と明記されていたが、今回は「スクロヴァチェフスキの手が入った独自の版」で演奏されるとのこと(一応小節番号はノヴァーク版による)。

 第1楽章、低弦のピツィカートに比べVaやVのフレーズは同じppでもより小さめだが、引き締まった音質。15小節以降のユニゾンは堂々としているが圧倒されるほどではない。55以降VaとVcによる第1主題、2つめのDesにアクセントを付けず逆に音量を落としてから、次の<>を大胆に付ける。
 238以降テンポがしばしば変わるところではほとんど変えない。だから普通なら雰囲気が変わる246から247にかけてもそのまま進む。何だか読点が一つ抜けたような感じ。その後オケ全体が鳴る場面がしばしばあるが、なぜかティンパニだけは大きくしない。347以降の息長いクレッシェンドの場面も同様。
 455以降のFlとClのメロディはppくらいで吹き始め、クライマックスへと向かう。相変わらずティンパニは控えめだが、510で急速にクレッシェンド。
 第2楽章、スクロヴァチェフスキは3連符1拍ずつ振る。弦のピツィカートはやや大きめ。31以降の弦楽合奏、がっちりした響きで始まり、37でもあまり音量を落とさず、59以降いい感じで盛り上がっていくぞーと思っていたら、何と金管が第2主題を鳴らす63からpppに落とす。つまり通常の演奏より4小節早い。139以降の長いFlソロが心地よい。

 第3楽章、相当テンポは速いがせわしない感じはしない。トリオの21以降VとVaをトレモロで弾かせる。この楽章が終わった後、指揮者がチューニングするか?とコンマスに目で合図。コンマスは大丈夫という仕草をするが結局指揮者の指示でチューニング。
 第4楽章、おかげで弦が弾くフーガの主題(31以降)は再び筋肉質の響きに。175以降など金管の響きが充実。驚いたのは終盤の全奏。どの楽器を耳で追えばいいのかときどきわかりにくいことがあるが、614〜617はHr、618〜623はTpのフレーズをはっきり浮き立たせる。そこまでは普通だが、624〜625では何と金管を押えてFlのフレーズを強調。演奏後指揮者が腕を下ろすまで数秒間の余韻に浸る。

 こだわる部分とそうでない部分の差がわりとはっきりしている。全体的に速いテンポで、曲想が変わる部分でも無造作に通り過ぎる箇所が目立つ一方、随所にスクロヴァチェフスキ独自の工夫も散りばめられている。ただ、ほとんどの出番で音量を押えるティンパニには少々疑問。
 団員解散後スクロヴァチェフスキ1人登場して客席の喝采を浴びる。今後彼らの演奏がどう深化していくか、引き続き見守りたい。

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