ルイジ指揮ドレスデン国立歌劇場管他
○11月12日(月) 19:00〜20:35
○サントリーホール
○2階LA5列11番(2階ステージ下手サイド5列目ほぼ中央)
○マーラー「交響曲第2番ハ短調」(復活)(約81分)

 (16-14-12-10-8)(下手から1V-2V-Vc-Va、CbはVcの後方)
○S=カミッラ・ニールンド、MS=アンケ・ヴォンドゥング、合唱=ドレスデン国立歌劇場合唱団(女声44、男声45)
 

ルイジ完全復活
 
 9月にドレスデン国立歌劇場の音楽総監督に就任したばかりのファビオ・ルイジは本来おとといの「タンホイザー」初日から振る予定だったが、ガボール・エトヴェシュと準メルクルに交代し、この日が日本の聴衆への顔見世となった。一時体調不良ではないかとの噂もあったので心配したが、元気な姿を見せる。9割弱の入り。合唱はオケと一緒にPブロックへ入場。

 第1楽章、冒頭からテンポは速いが重量感たっぷりの弦。しかし4小節目、チェロ・コントラバスによる上昇音階の最初のCを長めに弾かそうとしてやや不揃いに。それでも36以降の最初のクライマックスでは重厚な響きに圧倒される。かと思うと48以降のヴァイオリンのメロディは丁寧に歌わせる。最弱音ではほとんど聴こえないくらいに落とすが、291以降はどんどんオケを煽っていく。でもfffの部分でも全くと言っていいほど音が濁らない。441以降最後の下降音階ではあまりアクセントを強調せず、レガートで下りてゆく。
 第2楽章も速いテンポだが、メロディがゆったり流れてゆく感じがする。5〜8のコントラバスのピツィカートで見事なレガート。30で第1ヴァイオリンのC−As−Esの音型をたっぷり歌わせる。この楽章が終わったところでソリスト登場。
 第3楽章、12以降第1ヴァイオリンが白い布に自在に縫い合わされる色糸のように16分音符の音型を奏でてゆくと、それが木管にも受け継がれる。212以降がらっと雰囲気が明るくなり、金管が力強く響く。465以降の大爆発からだんだん引いていく様子が、夜空に消えゆく花火のように美しい。
 第4楽章、冒頭の「おお、赤い小さな薔薇よ!」を歌った直後、3以降のトランペットのアンサンブルがこれまでの奔放な響きから一変し、優しく声を包み込むようになる。これだけ聴いても彼らが音楽を知り尽くした歌劇場のオケであることがわかる。
 第5楽章、嵐が戻ってくる。ここでも各パートの音が凝縮されているので、テンポの割には音楽の歩みが落ち着いている。220以降の弦のメロディでは一歩一歩踏みしめるように弾かせる。舞台裏の金管も安定。472以降の合唱、pppでも音程がばっちり決まる。その後も緊張が途切れることなくクライマックスに入る。特に712以降オルガンがしっかり聴こえたのが快感。725〜727のfと728以降のffをきちんと区別するところなど芸が細かい。

 ソリストは二人とも清らかな声と落ち着いた歌いぶりが印象的。ルイジは速いテンポを基本とした上で起伏の大きい表現を随所に要求する。これにオケが余裕で応える。団員たちの表情が「もっと大胆にやってもええよ」といった風に見える(ホンマかいな)。弦はピットで弾く時より少し開放的な音だがこの日も音の内側に向かう輝きがある。木管は太いしっかりした音で存在感を示し、Es管のクラリネットですらチャルメラ調にならずいぶし銀の響きを保つ。金管は木管並みの細やかな節回しを随所に聴かせる。熟れきった退廃的な響きは一切なく、音の建築物として聴かせるマーラー。
 オケと合唱を解散させた後ルイジ一人で登場し、喝采を浴びる。紛れもなくルイジがドレスデンの支配者であることを日本の聴衆に印象付ける。

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