オッコ・カム指揮アジア・ユース・オーケストラ(AYO)
○8月30日(木) 19:00〜20:55
○東京オペラシティ・コンサートホール
○2階C4列14番(2階正面4列目ほぼ中央)
○シベリウス「フィンランディア」(16-14-14-12-8)
 チャイコフスキー「ロココ風の主題による変奏曲」(Vc=スー・ベイ)(10-8-6-5-4)
 +曲目不明(ト長調のフォークソング風小品)
 ブラームス「交響曲第1番ハ短調」Op68(約43分)
(16-14-14-13-8)(下手から1V-2V-Vc-Va、CbはVaの後方)
 

1年ぶりに若者たちから元気をもらう
 
 友人が関わっている縁で去年に引き続きAYOを聴きに行く。8割程度の入り。演奏前に芸術監督のリチャード・パンチャス氏から流暢な日本語の挨拶。今年のツアーは日中国交正常化25周年を記念する「日中文化・スポーツ交流年」のイベントとしても位置付けられているとのこと。

 「フィンランディア」、冒頭から各奏者は精一杯鳴らしているつもりだろうが、昨年のような圧倒的なパワーは感じない。ただ、後半の賛歌の主題はどのパートも抑え気味で、指揮者の「正調フィンランディア節」が徹底されているみたい。
 「ロココ」のソリスト、スー・ベイは韓国出身、カーティスとジュリアードで研鑽を積む。その割には前半音程に不安定なところがあり、音もあまり伸びない。オケと一緒だとすぐ消されてしまう。しかし、ニ短調の第6変奏では落葉の舞い散る秋の銀杏並木のような雰囲気で歌う。アンコールでも気品ある歌心が伝わってくる。彼女には大き過ぎるホールだったのが気の毒。

 後半のブラ1ではさっきソロを弾いたスー・ベイもステージ衣裳のままチェロの最後列で弾く。いかにもユース・オケらしい光景。
 全体的に速めのテンポ。第1楽章、8小節目で一度がくんと音量を落としてから急激なクレッシェンド。各パートが前半に比べると格段に自己主張するようになってきた。展開部を経て第1主題に戻る343以降で指揮者がさらに歌うよう煽っていく。474以降弦のDes-Bのピツィカートが繰り返されるところもテンポを緩めずに進んでいく。
 第2楽章、青春の歌が徐々に盛り上がって34以降見事なクライマックスを創る。ただ後半はやや勢い余って音楽の流れが前のめりに。終演後の打ち上げが少し頭をよぎったか?
 第3楽章、クラリネットは昔のボストン響みたいなちくわ状の音色。ロ長調になってからまた徐々に盛り上がり、103以降の弦はまばゆいばかりの響きに。
 第4楽章、ヴィオラ?の一部がフライング。20〜21のコントラファゴットは敢闘賞もの。団員たちの歌いぶりはさらに熱を帯び、62以降の歓喜の主題はもちろんのこと、後半に入ってもパワーは衰えず、特に320以降の弦の表情豊かな歌いぶりには唸らされる。そのままコーダへ突入するが、453〜456の4つの和音はゆっくりずっしり響かせる。

 パンチャス氏によると、今年は猛暑でエアコンの故障した北京のホールでは46度という過酷な状況の中で本番をやったそうだ。この日はかなり疲れもたまっていたのではないかと思うが、それでも昨年に負けないくらいのエネルギーが団員たちから発散される。それをカムが職人技でスケールの大きいアンサンブルにまとめていた。来月も残暑が続くようだが、彼らからもらった元気で何とか乗り切れそうだ。

表紙に戻る