N響プレミアムコンサート〜音楽の窓辺〜
○6月7日(木) 19:00〜21:00
○東京オペラシティ・コンサートホール
○2階R2列20番(2階上手サイド2列目、平土間最前列のほぼ真上)
○広上淳一指揮
○サン・サーンス「動物の謝肉祭」(P=児玉麻里、児玉桃、V=松田拓之、白井篤、Va=佐々木亮、Vc=木越洋、Cb=吉田秀、Fl=中野富雄、Cl=横川晴児、打楽器=植松透、竹島悟史)

 同「チェロ協奏曲第1番イ短調」Op33(Vc=藤森亮一)(約16分)
 同「交響曲第3番ハ短調」Op78(O=ギラン・ルロワ)(約36分)
 (14-12-10-8-6)(下手から1V-2V-Vc-Va、CbはVcの後方)
 (首席奏者:コンマス=堀、第2V=山口、Va=佐々木、Vc=木越、Cb=吉田、Fl=中野、Ob=茂木、Cl=横川、Fg=岡崎、Hr=松崎、Tp=岡崎耕二(都響首席)、Tb=新田))

もう半歩の踏み込みを
 
 オペラシティのコンサートホールでN響が演奏するのはそうあることではない。広上さんの最近の指揮ぶりは一度観ておきたいと思っていたし、好きな曲が並んでいるので、迷わずチケット購入。9割以上の入り。親子連れの客が目立つ。

 「動物の謝肉祭」はオリジナルの室内楽編成。ステージ中央に蓋をはずしたピアノが2台、鍵盤を奥側に向けて置かれている。その前に弦、ピアノの後ろに木管、下手側に鉄琴と木琴。N響の首席奏者たちが何人も加わる豪華な顔触れ。吉田さんの「象」は小錦のバスケットボールを思い起こさせる。「森の奥に住むかっこう」で横川さんは舞台裏から吹く。木越さんの「白鳥」は、一つのフレーズの終わりでふうっと息を吐いた後さらにもうひと伸びする感じ。
 ただ、全体的にもう少し楽しくやれないものか。指揮者の表情を見ているのが一番面白いという状態はどうかと思う。ピアノの2人はカーテンコールで下手に下がる時もあれば上手に下がる時もある。何だかN響の野獣?たちが美女姉妹を取り合いしているみたい。

 チェロ協奏曲では首席奏者の藤森さんがソリストとして登場。甘さを控え落ち着いた音色で、悩みや苦しみを内に秘め、思索にふけるような弾きぶり。短い曲だが緊張の糸が途切れず、最後に長調に転ずる部分でもはしゃぐことなく微笑で終わる。演奏後団員たちから喝采を受けてもあまり表情が変わらないように見える。N響にも「はにかみ王子」を発見。

 「オルガン付」第1部、テンポはほぼ標準的か。弦は14型だが近くで聴くせいか、分厚く響く。ヘ長調に転調して盛り上がる部分では、金管の響きに安定感。特にトランペットがしっかり頂点を作る。ハ短調に戻って第1主題の再現を目指す所で指揮者が弦をあおり、弦もそれに応えて一時かなり熱っぽい雰囲気になる。しかし、次第に落ち着いてゆき、Poco Adagioに入ってからはじっくり歌わせる。弦が細かい音符を受け渡していく所も丁寧に奏でていく。後半弦の各パートがそれぞれ二手に分かれる所では、メロディよりピツィカートの方が目立つ。
 第2部、やや遅めのテンポ。16分音符をしっかり刻ませていく。トリオ部分(Presto)でもあまりテンポを上げない。後半のMaestosoに入ってからさらにテンポが落ち、重々しく進んでいく。Allegroになっても速くならない。終盤1回目のStringendoで一気にテンポを上げるがすぐ落とし、あとはあまりムチを入れず重厚な雰囲気を維持。最後の音に入る直前のティンパニにもしっかりブレーキをかける。
 オルガンのルロワはまだ20代半ば、顔にあどけなさが残る。終始控えめで、もっとはっきり鳴らした方がいい箇所もいくつかあったが、全体的にはオケにうまく溶け込んでいた。

 広上さんの指揮ぶりは90年代前半に比べるとずっと端正になったみたい。オケを乗せるよりもアンサンブルをしっかりまとめることに重きを置いているように感じた。またも相撲に例えれば、立会い頭で当たれてはいるが、もう半歩踏み込めばもっと相手を圧倒できるのに。

 ただ、ホールの音響を考えればオーチャードホールよりオペラシティでの公演を増やしてほしいなあ。

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