エリソ・ヴィルサラーゼ(P)他+エリアフ・インバル指揮都響
○11月24日(金) 19:00〜21:00
○東京文化会館
○5階R1列28番(5階ステージ上手側1列目上手端から9席目)
○ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第4番ト長調」(約35分)(14-12-10-8-6)
R.シュトラウス「アルプス交響曲」(約46分)(16-14-12-10-8)(下手から1V−2V−Va−Vc、CbはVcの後方)
超Aオケに未来はあるか
考えてみたら帰国後日本のオケの演奏会に行くのは初めてだ。最後に聴いたのはいつだったか…ううむ、いかん、こんなことでは。「のだめ」の演奏って都響だったのか。それにしては客の入りが7割程度と少々さびしい。
ベートーヴェンはこちらをご覧下さい。
インバルを生で聴くのも数年ぶり。シュトレーゼマン似の髪型は変わらないが、お腹がますます出てきたかも。
「夜」の練習番号2(ドーヴァー版の表示による、以下同じ)以降の弦やファゴットの動きが不明確で沈滞した雰囲気だが、7の「日の出」でまばゆいばかりの輝きとなる。「登り道」に入ると速めのテンポで快調に進む。18の5小節目から始まるバンダは、2階の左右から朗々とした音を聴かせる。「滝で」ではキラキラした打楽器の音が水しぶきを連想させる。その後「頂上で」まで手堅く登っていく。80の金管も立派に鳴らす。「霧が立ち上る」あたりからだんだん暗くなるが、110の稲妻にはもう一息鋭さがほしい。でも続く「雷雨と嵐、下山」での迫力は十分。しだいに静まっていくが、最後のヴァイオリンのグリッサンドはゆっくりきっちり聴かせる。
インバルは明確に拍子を刻み、細かく指示を出しながらオケを引っ張っていく。終始鼻歌を交えながら振るところも変わらない。各パートがよくまとまっていてアンサンブルの見通しがよい。
ただ欲を言えば、1オクターヴ以上飛ばして上下するようなフレーズや半音階風に推移するフレーズなど、もっと濃厚に表現できないものか。ちょっとしたところを向上させればもっといい演奏になるのに。
技術的にはAオケをはるかに凌ぐが、Sオケの感覚を参考にする必要があるかも。何もコントラバスを回したりヴァイオリン奏者がのけぞって弾くだけがSオケではない。彼らをそのような行動に駆り立てずにはおかない、心の奥底にある思い。それが今日のような定期演奏会にも顔を出すようになれば、日本のオケのイメージも随分変わるだろう。