特撰落語会「談志・志の輔夢一夜」
○立川談志、立川志の輔
○5月30日(火) 19:00〜21:50
○新橋演舞場
○3階右列19番(上手側2列目舞台側から5席目)
○「金玉医者」(談志)
 「徂徠豆腐」(志の輔)
 「みどりの窓口」(志の輔)
 「子別れ」(談志)
 +小噺「アフリカン・ルーレット」

落語ワールドカップ決勝戦

 多くの日本人はサッカーのドイツ戦を観ようと夜更かししているのだろうが、落語界は一足早くワールドカップの決勝戦を迎える。
 てなこと、行く前は想像だにしていなかったのだが、新橋演舞場に入ると何だか異様な雰囲気。席に着くと、「談志派」と「志の輔派」で客が真っ二つに割れている。どちらでもない僕としては「えらい所へ来たなあ」という感じ。

 しかし、この一戦、談志が最初の演者として花道から登場した時点で勝負がついてしまった。こうなると、続いてやはり花道から登場した志の輔が「師匠のやることは予測がつかない」などとネタにして笑わせても、負け惜しみにしか聞こえなくなるから不思議。
 「金玉医者」では声が多少聴きづらいところはあったものの、とぼけた医者が何ともおかしい。師匠自身言われていたが、僕の大好きな故桂枝雀をほうふつとさせる。
 志の輔は真っ向勝負で「徂徠豆腐」の長丁場を演じる。天晴れ。休憩後は現代物で反撃。しかし、なぜか聴いている方はパターンが読めてしまう。二つとも大笑いしているのに、勝負の展開としては談志有利の状況がびくともしない。

 トリの談志は三部構成の「子別れ」の第三部だけやるために、わざわざ一部と二部のあらすじを、本編を一部交えながら紹介。その後ようやく始まった第三部、一度は別れた夫婦を息子が仲直りさせるのだが、この子が談志そのもののようなませガキ。「あー、今日はこれを客に聴かせたかったんだ」と納得。
 ところが、オチても師匠、お辞儀もせずに腕組みしている。そこへ客たちが声をかけたり拍手したりするものだから緞帳が下りてしまう。オーケストラの演奏会でも曲を知らない客がフライングで拍手することがたまにあるが、落語にもそんなことが起こるとは思わなかった。
 再び緞帳が上がっても腕組みしたまま。仕方なく?アンコールで小噺を披露。

 志の輔としては、師匠の術中にはまってさぞ悔しかったのではなかろうか?2人のどちらのファンでもない僕としても、再戦を願わずにいられない。

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