ジャパン・シンフォニア第6回定期演奏会
○蔵野蘭子(S)+井上喜惟指揮ジャパン・シンフォニア
○4月29日(土) 15:30〜17:25
○晴海トリトンスクエア・第一生命ホール
○1階14列12番(前半、下手側通路から1席目)、2階L1列12番(後半、2階下手側舞台奥から12席目)
○R.シュトラウス「変容」(約26分)(下手から1V-2V-Vc-Va、Cbは舞台中央奥)
 マーラー「交響曲第4番ト長調」(約60分)(8-8-6-6-3、下手から1V-Vc-Va-2V、Cbは1Vの後方)

やわらかい弦の響きに酔う

 紀貫之「土佐日記」ではないが、「著名評論家・ジャーナリストが絶賛すなるジャパン・シンフォニアを、米国帰りも聴いてみんとて聴くなり」みたいな感覚で会場へ。いつの間にか築地の先にこんなホールができていたとは。完全におのぼりさん状態。7割程度の入り。
 「変容」、テンポは少し速め。最初は2人や3人の合奏の合わないのが気になるが、次第にやわらかい響きがホール全体に広がっていく。ヴァイオリンの高音は輝きを放ち、コントラバスはレゴのブロックのようにアンサンブルの土台をしっかり、しかし周りを傷つけることなく築いていく。ドイツの過去の栄光を追憶するかのような中間部になると安心して身を任せることができる。終盤のグラン・パウゼ(大休止)の後のつややかな響きも忘れ難い。

 マーラーの第1楽章、少し遅めのテンポ。ここでも弦が無理なく響き、例えば37小節目、Va以下のフレーズの終わりも押し付ける感じがなく、自然に消える。中間部で盛り上がった後最初の主題に戻る239以降、1Vがメロディを少し引きずるように弾く。悪夢でうなされた後すっきり目が覚めないような感じ。336〜337のホルン・ソロは速いテンポのまま。340で思い切ってテンポを落とす。あとは一気にクライマックスへ向かうが、アンサンブルは崩れない。
 第2楽章、遅めのテンポ。コンミスの持ち替えた楽器の調子がよくないのか、ソロがうまく響いてくれない。おそらくその両者が原因だろうが、今一つスムーズに流れてくれない。
 第3楽章、Va以下が落ち着いた響きを取り戻し、一安心。31以降のヴァイオリンの高音も美しいが、もう少しキューンと集まる感じがほしい(209なども同様)。188〜189のVaはフレーズを区切らずレガートで弾く。283で思い切ってテンポを落とす。315以降爆発する場面でがさつな音がしないのはすごいかも。この間に蔵野さんが登場。330以降の弦、楽譜はpppだがpくらいの音量。350以降も徐々に消えるのでなく、一定の音量を保ってパッと消え去る感じ。
 第4楽章、さらに遅いテンポになる。歌い出すまでの間、蔵野さんは「オズの魔法使い」で魔法の国に迷い込んだジュディ・ガーランドのようにあちこちを見渡している。演技付のマラ4とは珍しい。本当にここが天国なのか、あちこち確かめていくかのような、丁寧な歌いぶり。よく通る高音が心に残る。

 井上さんの指揮ぶりは横の揺れが多く、60年代の歌謡曲のバンドを指揮するような感じ。

 細かいところはもっと磨けそうな気がするものの、編成からは想像できないような豊かな響きが出ているのに驚く。次の定期演奏会は11月だそうだが、とても待ちきれない。

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